投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

春眠の花
【フェチ/マニア 官能小説】

春眠の花の最初へ 春眠の花 45 春眠の花 47 春眠の花の最後へ

は乃花-18

 清楚な制服姿で、携帯電話を片手に、彼女がこちらに近づいてくる。

「愛紗美ちゃん」

「どうして出てくれないの?」

 愛紗美が言った。

「奈保子さんはどうしてケータイに出てくれないの?」

 どうやら私に電話に出るように言っているようだ。

「ここは病院なの。携帯電話の電源は切っておきなさい」

 そうして私は自分の携帯電話を探す。けれどもどこにも見当たらない。

「はやく出てってば」

 愛紗美は語気を強めて私に詰め寄る。
 彼女の手の中にある携帯電話が、着信を告げて止まない。

 見覚えのあるストラップとデコレーション。
 私の探し物は、彼女の握っているそれだった。

「それ、私の携帯電話……」

 どういうことなのかまったくわからない。
 とりあえず彼女から携帯電話を受け取り、通話キーを押す。

 それなのに着信音が止む気配はない。

 もう一度、ボタンを押してみる。

 もう一度──。

 もう一度──。

 手応えがない。

「壊れちゃったみたいだから、話があるなら直接言って?」

「だめだよ、ちゃんと電話に出なきゃ」

「どうして?」

「まだ気づいてないんだね」

 彼女は立ち尽くしたままで言った。

「今見えてるあたしも、そこにいる看護師さんも、ぜんぶがぜんぶ夢なんだよ」

 私はリアクションに困った。このまま彼女の冗談に付き合ってあげたほうがいいのだろうか。

「はやく起きないと仕事に遅れちゃうよ」

「仕事?」

 その瞬間、ぷつりと映像が消えて、魔法が解けるように私は夢から覚めた。


春眠の花の最初へ 春眠の花 45 春眠の花 47 春眠の花の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前