ろ乃花-13
いまどきの女子高生の代表として、彼女の口から出た告白。
それを聞いた私はさっさと配達を済ませると、彼女を連れて建物に入り、今に至る。
「まだ勤務中なんだからね。今回だけだよ?」
うんうん、と首だけ返事でにっこり笑い、彼女は期間限定のハンバーガーを両手で持って、レタスやトマトをはみ出させながら美味しそうにかぶりつく。
時刻はちょうどお昼だ。
ついでに自分も、予算におさまる程度にお腹を満たしておこう。
「妊娠の相談かと思ったら、お腹が空いてただけだなんて」
「妊娠なわけないじゃん」
彼女は、携帯電話をいじるのと、食べるのに夢中だ。
「家の近くまで送ってあげるから、明日からはちゃんと学校へ行きなさい」
「ママみたいなこと言ってる」
「私はあなたの保護者じゃないの」
すると急に押し黙って、ため息をつく彼女。
「あたしのママ、いないんだ」
もう一度、ため息が聞こえた。
これは相当まずいことを訊いてしまったような気がする。
「いいの、いいの、ただの離婚だから。もう慣れてるし」
言葉通りに彼女は平然とした態度をくずさずに、アヒルみたいな口で笑ってみせる。
割り算みたいに簡単に割り切れる問題ではないことくらい、離婚歴のある私にもよくわかる。
忘れていたはずの過去を思い出した私は、冷めたコーヒーに口をつけて苦い顔をした。