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春眠の花
【フェチ/マニア 官能小説】

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い乃花-2

 あなたに会いたいから、ママは頑張る。
 だからあなたも頑張って、元気な姿をママに見せてね──。

 いつの間にか、意識の遠くのほうから救急車のサイレンが聞こえてくるのがわかった。

 母子の命をつなぐ糸を、こんなところで切られるわけにはいかない。

 そんな私の覚悟を感じ取ったのか、胎動はおさまり、子宮口の内側から小さな頭を押しつけられているような感じがした。

 ほどなくして、救急隊員と思われる白い人影が視界に入り、事態が迫っている私を抱えて救急車両の中へと運んでくれた。

 そこでは付き添いの女性看護師による処置が手際よくおこなわれて、もう大丈夫ですよ、私に合わせて呼吸してください、と優しい声をかけてくる。

 まるでナイチンゲールのよう。

 別の声も聞こえた。どうやら私の受け入れ先の病院を探しているらしい。

「そうですか、わかりました。ほかをあたってみます」

「まただめだったんですか?」

「緊急の手術があって、手がまわらないらしい」

「冷静になりましょう。病院ならまだあります」

「そうだな。母体と胎児を救えるのは僕たちだけだ」

 そんなやり取りの空気を読んで、ナイチンゲールの彼女が落ち着いた声を割り込ませた。

「あそこなら受け入れてくれるんじゃないでしょうか?」

 天使のような声、そんな印象だった。

 彼女の示した言葉の意味をすぐに理解した隊員の人たちは、しばらく思案したあと、緊張の表情で次の行動をはじめた。

 おそらく今の私の表情は、彼ら以上に緊張して引きつっているはずだった。

 今にも産まれそうなのだから。

「安心してください」

 身重の私を気遣う看護師の声がした。

「あそこなら医療設備も整っているし、優秀な産科医やスタッフがそろっていますから」

 私はうなり声の中で、二度、三度とうなずくのが精一杯だった。

 ナーススーツというものはとても清潔感があって、女性の魅力を生かすには都合のいい制服だ。

 けれども彼女の場合はそれだけじゃない。

 肌色や目尻の角度によって、ある程度の年齢は読めそうなのに、内側から匂ってくるミステリアスな色気が、彼女の加齢を止めてしまっているような気がした。


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