い乃花-11
「産道の通りをスムーズにするために、膣を拡張します。痛いときには痛いと言ってください。それと、気持ちいいときには、それなりの返答をお願いします。よろしいですね？」
「こんなこと、絶対おかしい……」
泣き寝入りなんてしたくはない。
乱暴に犯されようが、気味の悪い道具や薬物でもてあそばれようが、私がこの陰湿な組織の実態を公表さえすれば、おなじような被害に遭っている女性を救えるかもしれない。
私はできるかぎりの正義感を目にたぎらせて、生意気な医師を睨みつけた。
「小村さん、僕があなたに出会えたことは一生の幸運です。ドクターとクランケのあいだに生まれる信頼関係、これを脳が勘違いして恋愛感情だと思い込んでしまうというのだから、女性とはつくづく愛に弱い生き物だと思いませんか？」
それらしいことを言いながら、彼はトレイに並んだ器具を品定めすると、その中の一つを潔癖な手つきで摘み上げる。
それはとても不潔な形をしていて、おそらくアダルトグッズの機能を備えているのだろう。
回転がどうとか、太さや素材がどうとか、いちいち胸焼けのしそうな説明をくれる。
それなのに私の下半身ときたら、ヴァージンを取り戻したように半熟に茹だって、それでいて一輪のローズみたいに陰唇を仕舞っている。
「呼吸を楽に……、そうです……そうです……、入りますよ……ゆっくりと……、子宮に感じてください」
「そんな……ああっ……いい……いやです……うっく……」
身体の許容範囲を上まわるものが、私の中に挿入された気がする。
リアクションに困ってしまうくらい、ぎりぎりの感覚を性器にあたえてくる。
ほんとに困っちゃう──。
「出血はないようなので、少し動かしてみましょう」
彼は左手の器具を私の局部に挿入させたまま、右手でタッチパネルを操作する。
その間に、いくつものいやらしい視線が私に注がれる。
ちくちくと肌を刺す感じだった。
こんなに凄いのが、私の中で動き出したら、非常に都合の悪いことが起こると思う──。
焦りと不安を瞳に浮かべていると、泉水医師のスマートな指がまた画面をタッチした。
「イグニッション──」
彼の放った言葉を合図に、通電を知らせる低い音が私の中でブオンと唸った。