白雪=憲の理想?-3
化粧?
うん、ちょっと違うなぁ。
……ポーズか!
マリリン・モンローみたいな!
うーん、こうか…?
斜めに構え、人指し指を唇に当ててみた。
うーん、ちょっと足りないかなぁ。
声も必要かな。
「……うっふぅん」
…………………。
だ、駄目だ。死ぬかと思った。
タイムマシンがあったら三十秒前に戻ってぶん殴ってでも馬鹿なアタシを止めたくなった。
それぐらい恥ずかしかった。間違いなく人間は羞恥心で死ねる。
いやしかし、そう簡単にくじけるアタシじゃないぞ。精神的ダメージは大きかったが……まだまだだ。
声を出さなければ、堪えられる。
セクシーなポーズ……こんなのもあったかな。
両手を頭の後ろに組んでみる。
……お、なかなか。
でもキャシーには遠く及ばないなぁ。
と、アタシが落ち込みそうになったその時。
「お〜い、白雪。このCD、憲に返しといて………白雪、グラビアアイドルにでもなるのか?」
ノックもせずに孝之が入ってきた。
アタシは下着姿で鏡の前につっ立ってポーズを決めていた。だから、何気無く孝之はそう言ったのだろう。
が、アタシにとってその言葉は殺人衝動のスイッチだった。
生憎、一番殺したい『ちょっと前のアタシ』はタイムマシンが手元に無いため消す事が出来ない。
と言うわけで、第二目標にターゲット変更………。
「ちょ、ちょっとちょっと待った待った待った待った白雪さんその手にしたものは何ですか?模造刀ですよそれ。しかも一番大事にしてた虎徹………いやごめんなさいごめんなさいもうしません次からはちゃんとノックしますから許して!」
「問答無用、死ねぇーーーーーーーー!!!!」
「ギャァァァァアーーーー……………!!!!!」
ばぎゃ、とか、めげぇ、とか、ぐじゅ、とかの効果音が出ていた様な気もするが、まぁ人間の体からそんな気持ち悪い音は出ないだろう。
気のせい気のせい。
とりあえずわかったのは、こんなポーズしたってキャシーみたいにはなれないって事だ。
こうなったら、最終手段をとるしかない。
憲に自家談判だ!憲の理想になるために、憲に聞いてやる。
恥ずかしさなんて孝之を半殺しにした時に捨てた!!
決意新たに、アタシは血にまみれた拳を握った。
次の日、アタシは憲の家にいた。
息巻いて自家談判に来たは良いけど、緊張する。
しかし、ここを乗り越えなくては!!
「で、話ってなんだ?」
湯飲みをアタシに出してくれながら、憲はアタシの前にテーブルを挟んで座った。
「……………」
「……黙ってても分かんないぞ」
わかってる。……でも、やっぱ恥ずかしい。
それに、聞いて、もし『お前は俺の理想にはなれない』とか言われたらどうしよう……。
「白雪、なんでそんなに深刻な顔をしてるかはわからないが、言わないのなら意地でも聞き出すぞ?」
へ……?
「苦しんでる白雪は見たくない」
………。
「憲は、その……」
「ん?」
やっぱ恥ずかしい!
で、でも、憲があそこまで言ってくれたんだ!
「どうした?」
「憲、アタシは金髪にして豊胸手術を受けた方が良いか!?」
ゴンッ!
「け、憲?」