赤塚沙樹は出産準備中 第9話-1
幸いというべきか、陣痛が始まった。
「あの…、お腹が痛い…んですけど?」
「あら!陣痛が始まったみたいだね!さあ、もっと足を開いて!!」
沙樹はベッドに寝転んだ。寝転んだ沙樹の身体を支える謙太くんは顔を横にして、沙樹の身体から目をそらしている。
「ちゃんと見ていなさい、謙太!」
麗子さんが謙太くんを怒鳴ると、渋々こちらを向いて、沙樹のお腹に視線を合わせた。
沙樹は両足をこれでもかと開いた。沸き上がる痛みに顔を歪ませながら、沙樹は必死になって産婦人科で習った通りの呼吸法でいきむ。
しばらくして痛みが消える…、5分位時間を置いてまた痛みが現れる。
「いいいいいいいいッたああいッ!!!」
「沙樹さん、頑張って!!!赤ちゃんが出てきたいって合図してるんだから!!ほら、もっと頑張って!!」
助産師さんは苦痛に声を上げる沙樹を励ます。
響子さんはただ沙樹にカメラを向け仕事をこなし、麗子さんはニヤニヤと見下すよう表情を浮かべ、謙太くんはなにかを諦めたような顔をしていた。
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沙樹は痛みと格闘していた。
身体中から汗びっしょりと染み出し、服が沙樹の身体に張り付く。乳首の先から母乳が出ているのか、沙樹の胸元にシミが出来ている。
痛みの感覚は段々と短くなってくる……
「うううううううううううッッ!!!いたあッ!!」
「よしよし、赤ちゃん、下りてきているよ!!あと少し頑張って!!」
沙樹は何度も痛みに声を上げる。沙樹はなんとか呼吸を整え、何度もやってくる痛みの度に必死にいきむ。
「大分、開いてきたよ!!もう少し、ほら頭が見えてきた!」
沙樹が股間を覗くと、確かに赤ちゃんの頭が見えている。赤ちゃんは羊膜に包まれ、まるで巨大なうんこのようだった。
(オマンコでうんこしてるみたい…!変なの!)
沙樹は以前、謙太くんが沙樹のマンコにうんこを突っ込んだことを思い出して苦笑した。
なぜ苦笑しているのかわからない助産師さんは一度怪訝な顔をしたが、すぐに気を取り直して沙樹に言った。
「さあ、なにも気にせず、一気に産んじゃいましょう!!」
沙樹は何度も頷いて、何度も続く陣痛の波に乗っていきんだ。
なかなか赤ちゃんは出てこず、沙樹も痛みと疲労でクタクタだった。
「うううううんッ!!くぅうううッ!!!」
「もっと力を抜いて!!ゆっくり深呼吸!!」
助産師さんは沙樹を励まし、沙樹は必死にいきむの繰り返し。その繰り返しが何度か続いたあとだった。
「出てきた!!首まで出てきてるよ!あと、もう一息!!!」
助産師さんが沙樹に言った。助産師さんの励ましに応え、沙樹は力を振り絞っていきむ
「んんんんんんんッううううううううッ!!」
「いいよ、その調子!グッと息を止めて、力を入れて!!」
沙樹は謙太くんの手を強く握りしめようとしたが、謙太くんはその手を払いのけた。
「んんんんんああああああああッッッ!!」
沙樹が力を込めていきんだ瞬間、沙樹のオマンコからズルリと音がして、赤ちゃんが姿を現した。
オギャア、オギャア!
赤ん坊はすぐに産声を上げた。
「おめでとう!元気な女の子です!」
助産師さんが言った。沙樹は長い間自分のお腹の中にいた赤ん坊を見つめた。
(あれ!?ただ痛かっただけって感じ……?)
沙樹は自分の赤ん坊をみたとき、なんの感情も出てこないことに驚いた。
響子さんはカメラのレンズを沙樹のアソコに向けていた。麗子さんはもう終わったのという感じで退屈そう。謙太くんは何度も嘔吐いていた。
沙樹はぼんやりと視線を彷徨わせ、もう自分の産んだ赤ちゃんのことを見ていなかった。
終わり。