世なりとも-1
「おい。映画はどうするんだ?」
今日は。久しぶりにハルト先輩から
「時間があるから映画に行こう」と
誘われたのに。
待ち合わせのカフェにハルト先輩はなかなか来なかった。
そして、走ってきたのはレン先輩。
「悪い。ハルト急に用事が出来た。俺でよかったら映画に付き合うよ」
大粒の汗をかきながら
向かいの席に座った途端、お水を飲み干した。
「なんでレン先輩が?」
「ハルトが急に用事が出来たって。電話してきた。
梨乃が映画を楽しみにしてるから、一緒に行ってやってくれって」
「そうですか」
そう言ったきり私は言葉が出せなかった。
「帰ります。わざわざ来てくれたのにスミマセン」
そういうと私は伝票を持ってレジに進んだ。
「おい。映画はどうするんだよ」
カフェを出たところでレン先輩に腕をつかまれたけど
振り向くわけにはいかない。
どうしても涙を止めることが出来ないんだもん。
「梨乃」