序章-1
《痴漢専用車両へようこそ》
【序章】
物事に裏と表があるように、悦ぶ者が居る影には苦悩する者が居る。
しかし、それらの立場が不変で有るかを問えば答えは否である。
苦悩する者が努力の果てに悦びを見出すことも有るだろう。
逆に悦ぶべき立場の者がいつしか苦悩する日々が来ることもある。
さて、世に【女性専用車両】が出来たのはいつの頃だったか?
周知の通り痴漢を防止する車両のことだ。
有る者はその登場を悦び、有る者は残念に思ったであろう。
しかし悦ぶ者が女性とは限らない。また、残念に思うのは男性とは限らない。
物事に裏表がある。
痴漢を防止する車両が有るならば、それとは正反対の車両が有っても不思議ではない。
今日もどこかで電車が走り、そしてその車両も密かに乗車する者を待っている。
その車両の名は【痴漢専用車両】
この物語は苦悩を強いられた者たちの闘いの物語である。多分…。