様々なこと-1
「あふ……ふう」
月曜の朝──本島へ向かう始発便の船内で、僕は眠い目をこすってる。営業日は三時半までしか寝てられないに、前の夜、色んな事が一遍に重なっちゃって、遅くまで起きてて寝不足だ。
(でも、行って良かった)
昨夜の出来事が頭に浮かべると、とても気分が良くなって、すぐに顔が緩んでくるのが自分でも判る。
「何だよ?話って」
昨夜七時過ぎ。家に到着すると、すでに美咲は待っていた。
「待たせてごめんな」
美咲を見て、僕は「おや?」と思った。敵意剥き出しだった今までとは明らかに違う。
「昨日のこと、ちゃんと謝りたかったんだ」
「ちゃんと?」
むしろ、僕と此処にいることに戸惑ってるみたいだ。
「おばさんが入院してるって知って、何で美咲が腹を立てたのか、やっと解ったよ」
「……」
「診療所に行くのを邪魔してしまって、本当にごめんなさい!」
頭を下げた──許してくれなんて言わない。唯、過ちを認めたことを解って欲しかった。
罵られるかも知れないと覚悟する。でも、美咲は黙ったまま声を発しようとしない。
夜のじっとりとした空気が、とても重苦しく感じられた。
「もういいよ……」
それは、どれほど経ってだろう。美咲が、重い口をようやく開いてくれた。
「──飛び出したわたしの方が悪い。本当は解ってる……」
頭を上げた視線の先に、俯く美咲の暗い表情が──学校でのストレスや母親の入院による不安が折重なって、感情のコントロールを誤っただけで、今は過ちだと言ってくれた。
だったら、この件は終わりであって、これ以上は不要だ。
「あの……入院って、いつから?」
僕は、次に知りたかった事を恐る々と訊ねた。
命にかかわる病気だったらと頭を横切ったけど、それなら島の診療所にいるはず無い。だから直接、教えてもらいたかった。
美咲は、俯いたまま答えてくれた。
「ニ週間前……」
「そんなになるのか……」
夏休み直後から入院してたなんて、気付きもしなかった。