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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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様々なこと-3

「おばさん。俺達を見て、どんな顔するかな?」

 海人も僕と同じで、久しぶりの再会に少し緊張してるみたいだ。
 美咲のおばさんは遠慮のない人で、よく叱られたこととオヤツをたくさん食べさせてくれたことの二点は、かなり鮮明に憶えている。

「やっぱり閉まってるな」

 診療所は、普通の家の三軒分くらいの大きさで、小さな待合室に手術室を兼ね備えた診察室、それに六人部屋の病室が五つからなる病棟と、医者の先生や看護婦さん等関係者が住む、小さな家がすぐ傍に建っていた。

「夜間用呼び出しを押してみよう」

 僕は入口扉にある、チャイムのボタンを押した。これで診察室かお医者さんに連絡が入るはずだ。

「はい、どうしました?」

 チャイムから聞こえた声は、看護婦の三浦さんだった。

「すいません!真中春海の娘、美咲です」

 美咲が三浦さんに、見舞いさせてくれるよう頼んでいる。その真剣な横顔は、僕よりも海人を驚かせたようだ。
 用件を聞いた三浦さんは、しばらく黙ってたけど「しょうがないわね」と言って見舞いを許してくれた。

「いい?九時には消灯だから」

 三浦さんは本島の人で、三日に一度、泊まり勤務があるから此処で暮らしてる。
 二十五歳で、三人いる看護婦さんの中じゃ一番若いけど、一番おっかないと評判の人だ。

「こっちよ」

 診察室の奥、すでに薄暗い廊下に、二つの病室からの明かりが漏れている。僕と海人は美咲の案内で奥の病室へ入った。
 各ベッドはカーテンで仕切られていて、おばさんのベッドは左手の窓際だった。

「よく来てくれたねえ」

 おばさんは、突然、現れた僕と海人の姿に泣いて喜んでる。強そうな印象だったけど、病気で気が弱くなってるみたいだ。
 僕等も、こんなに喜んでもらえるなんて思わなかったから、とても嬉しかった。

「そろそろ時間よ……」

 おばさんの病気の加減に僕等の近況、そして共通の思い出へと話が移った時、三浦さんが終わりを告げに来た。
 僕等は「今度は渚も連れて来るから」と約束して、病室から出ていった。

「おばさん、後、どのくらい掛かるの?」

 診療所を出る時、僕が三浦さんに訊ねたら、はっきりしたことは教えられないと言った後に「あと一週間くらい」だと答えてくれた。

「おばさん、元気そうだったな……」

 診療所からの帰り、海人が思いを漏らした。僕もまったくの同意見で、嬉しさとホッとした気持ちが一緒になって、とてもすっきりしてる。

「海人、拓海……今日はありがとう」

 そして何よりも、美咲が以前のように話かけてくれたことが、一番の収穫だ。


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