様々なこと-2
「僕も、お見舞いに行けないかな?」
「……」
僕は行動を次に移した。先ずは、遠のいてる関係を、もう一度近づけたい。
「海人も連れて行くよ。ずいぶんと会ってないけど、僕等が行ったら、おばさん喜んでくれるかな?」
話を聞いて、美咲は俯いてた顔を上げた。
向けられた目に敵意はない。戸惑いもない。あったのは、僕が以前見た、優しそうな目だった。
「あのさ……」
「──と言っても明日から父さんの手伝いだから、夜七時過ぎにしか行けないけど、一緒に行こうよ」
提案に、美咲は小さく頷いてくれた。
「じゃあ、明日、メールするよ」
帰ろうとした刹那、美咲が小さな声で「ありがとう」と言ってくれた時、嬉しさが心の底から涌いて来るのを感じた。
僕達は今回、少し解り合えたと思う。そして、もっと近づくことが出来れば元のようになれるはずだ。
(後で海人と渚にメールして、みんなで見舞ったら、おばさん驚くかなあ……)
海上に設置してある灯台が見えて来ると、もうすぐ本島の港だ。
「ふあ……さて、準備に掛かるか」
僕は本日、何度目かのあくびをして、船内からデッキへと向かった。
「遅いぞ!」
日も沈みかけた夕方。乗降場前で海人と美咲が、僕が来るのを待っていた。
「やっと終わったんだ」
ようやく手伝いを終えて彼等に合流すると、海人が僕に何かの包みを手渡そうとする。
「何?」
「何って花束だよ。おまえ、見舞いに行くのに、手ぶらでいいと思ってたんじゃないだろうな?」
色鮮やかな青紫の花。見舞いに行くと言ったら彼の母親が、花壇からこの花を摘んでくれたそうだ。
「植えた本人が名前を知らないそうだけど、これが一番綺麗だからって……」
「だったら、海人が持ってなきゃ駄目だよ」
「やだよ、男が花なんて……。それに、言い出したのは拓海だろ。おまえが代表しておばさんに渡してやれ」
ずいぶんと無茶な論法だと思ってしまうけど、僕は花束を受け取ることにした。
見舞いに花束なんて、僕じゃ思いつかない。海人の気遣いがありがたかったし、早くしないと、診療所に入れてもらえなくなってしまう。
「ところで、渚は?」
僕が昼間にメールした時は、一緒に行くと返して来たのに。
「あの……渚、さっきメールで来れないって」
美咲の小さな声が、僕逹を気遣ってるとすぐに解った。
「仕方ない。渚とは次回として」
僕等は、診療所へと急いだ。時刻はすでに七時半。普通なら見舞いは断られる時刻だけど、こんな島の診療所だから、美咲がいれば多分、大丈夫だろう。