様々なこと-12
「──それにしても、びっくりしましたよ。いきなりパンツ見せろだなんて」
「でも、拓海くんも嫌なことを忘れて笑ってたじゃない」
貴女の一言に、僕は強い衝撃を受けた。
「ひょっとして、その為にパンツ見せろって言ったんですか!」
「違う!パンツは純粋に見たかったの」
また企みのあるにんまり顔。どこまでが本気なのか、僕には解らない。
「さあ、拓海くんと楽しみな約束も出来たことだし、そろそろ帰りましょう!」
でも、貴女と話をして、僕はずいぶんと気が楽になっていた。
「それじゃ、お休みなさい!」
沙織さんと出逢って五日目。貴女の優しさに触れ、僕はすっかり、どん底だった気持ちから立ち直ることが出来ました。
水曜日の昼休み──営業中の十ニ時三十分から十四時までは、船は出航しない。父と僕も含めた乗降場の従業員の大半が、昼休みを迎える。
でも、一部の従業員は昼休みが仕事となる。船を整備する人達だ。
連絡船への給油に、エンジン音やエンジンオイルに不備は無いかを調べたりと、たった一時間半という短い間に午後の出航の為に備えてくれる。
「ほら!あんたに頼まれてたもの」
乗降場の付近に、食事出来る店は定食屋一軒しかなく、僕等は毎日、そこを利用している。
その定食屋のおばちゃんが、僕を見るなり大きめの皿をテーブルに持って来た。
「おばちゃん!これ」
「カシワの唐揚げだよ。食べたがってたじゃないさ」
カレー皿に大盛りにされた唐揚げは、揚げたばかりで、まだ湯気が立っている。
「うああ、ありがとう!」
「食べ切れなかったら、持って帰るんだよ」
一口食べた僕が「美味い」を連呼すると、おばちゃんの少し丸い顔が微笑んだ。
「そんなに好きなら、メニューに加えてやるかねえ」
おばちゃんは笑いながら、僕等のテーブルから離れていく。もちろん、僕が夏の間だけと知ってるから、期間限定という意味だろう。
でも、これで食べる物の楽しみがひとつ増えたわけだ。
おばちゃんは元々、旦那さんと二人で漁師をやってた人で、四年前に廃業して、今は連絡船の会社が運営する定食屋を任されている。
「ご馳走さまでした!」
昼ごはんを済ませると、僕等は、乗降場のキップ売場の奥にある休憩室で待機となる。
父はここで仮眠を取るが、僕は眠らない。一度寝た午後の仕事で、なかなか眠気が抜け無くて困ったからだ。
「さて、海人と美咲はいるかな……」
この間に、僕は友達と連絡を取って、次回の見舞いの日程を相談する。
──僕の希望としては土曜日が一番。仕事も休みなので、明るいうちに会いに行ける。更に言えば午後が良い。どうせ午後中は、家事に追われるはずだから。
以上の希望を僕の基本にして二人の希望も加えてから、日程を決めるのが理想なんだけど、現実には、そう簡単でないことを僕は経験から知ってる。