師弟の病名、教えます。-4
結局、ルーディはその後すぐアイリーンやヘルマンと諜報関係の極秘話に入り、ラヴィはサーフィと手伝いをしていたので、ようやくまた顔をあわせたのは、夕方になり帰る時だった。
オレンジ色の夕日が辺りを染めあげる中、ラヴィと二人で市場を後にする。
隊商の人間たちは、馬車や宿屋に泊まる。サーフィとヘルマンも宿を取っているそうだ。
できれば家に泊まって欲しいが、あの小さな家には、大人四人が寝れる場所も予備の布団もない。
「明日も楽しみ」
ウキウキと上機嫌なラヴィの隣りで、ルーディはなんだかスッキリしない。手に盛った大きな籠をブラブラと揺らした。中にはサーフィたちから貰った異国のお土産や、市場で買った食材が入っている。
やたらと嫉妬するなど、自分でもみっともないと思う。しかも相手は犬!
しかし犬だからこそ、かえってルーディの狼部分が、激しく反応してしまうのだ。
どんな小さな犬でも怖がっていたラヴィが、あんなにも初対面の犬を可愛がるなんて。
狼のルーディを初めて見た時は、布団に飛び込んで震え、次に見た時は気絶してしまうほど怖がったのに!
人狼の鋭い嗅覚が、ラヴィにくっついている色んな匂いを探り当てる。
市場の雑多な匂いに、サーフィの匂い。他にも隊商の仲間たちの匂い。そして、あの小型犬の匂いがしっかりと残っていた。
おそらくルーディと離れている間に、また抱っこして可愛がっていたのだろう。
「ラヴィ……」
家に入り玄関を閉めたとたん、我慢できずに後ろから抱き締めた。
「え!?」
小柄な軽い身体を抱き上げ、寝室まで行くのももどかしく、手近なソファーに押し倒した。
床に放り置いた籠が倒れ、オレンジが転がり出る。
「ちょ、待って……!」
「待てない」
ラヴィを組み敷き、有無を言わさず口づける。唇をこじあけ、歯列を割り、舌を吸い上げ貪る。
このまま食べてしまいたい衝動を堪え、柔らかな舌を何度も甘く噛んだ。
「んっ!んんっ」
ルーディを押し返そうとする両手は非力で、自由であってもたいした抵抗にはならない。
片手で軽く肩を抑えているだけで、ラヴィは起き上がることすら不可能だ。襟元のリボンをほどき、ブラウスのボタンを外す。
愛しいつがいに付着している余計な匂いに苛立つ。
「ど……して?な、なにか怒ってるの?」
ラヴィは口元にひきつった笑みを浮かべ、震え声で尋ねる。
「……たぶん、言ってもラヴィにはわからない」
ルーディは薄く笑った。
所詮は異種族だ。本能のつくりが違うのだから、理解しろと言うほうがどうかしている。
「ラヴィは悪くない。俺の問題だ」
止められない、獣の本能が悪い。
ブラウスの前をはだけ、露になった小ぶりの胸をペロリと舐めた。
ラヴィが短く息を飲み、薄桃色の先端がヒクンと震えて硬度を増す。
唇に挟み舐めしゃぶると、組み敷いた身体が何度も跳ねる。
ラヴィは目を瞑って眉を潜め、何かに耐えるよう唇を噛み締める。
白い肌にじわりと汗が滲み、大好きなラヴィの匂いが濃く誘惑する。狼の血が騒ぎ、背筋を震わせた。
琥珀の瞳が光り、犬歯がわずかに伸びる。
狼化したいのを必死に耐える。凶暴な血を制御する自信がない。今、狼の姿になったら、それこそラヴィがズタズタになるまで犯しぬいてしまうだろう。
ああ、でも、そうすれば、愛しいつがいの全身に、俺のものだと、刻みこんで……