第三話-7
ベッドに横になれと言われたのか?な、なぜに?
「な、なんでやねん」
「なぜ関西弁。っていちいち突っ込ませないでよ」
「スルーすればいいだろ」
「ああもう!さっさと横になれ!」
「あひゃ!?」
横になれとか言いつつ押し倒されたわけですが。
なんだこれ。なんで俺、クラコに押し倒されて馬乗りされてるわけ?
「き、キスするから・・・」
「へ!?」
「目、つぶりなさいよ・・・」
キスするから目を潰れ、じゃなくてつぶれって・・・マジ?いつもクールなあのクラコが?もしかしてムッツリ?
「鱚(きす)とは、どんな魚でんむむっ!?」
唐突に唇を塞がれる。当然目をつぶる暇なんてなかった。
キス。それもファーストキス。クラコに馬乗りされたちょっとアレな体勢のキス。
どれくらい唇を交わらせていただろうか。漫画なんかではよくあるように、何秒なのか何分なのかわからない。とにかくやがて、クラコの唇が離れていく。
クラコの顔は耳まで真っ赤になっていて、俺の顔も熱くなっていた。
「お、思ったよよりも、は、恥ずかしいわね・・・」
「そ、そうな・・・」
お互いに顔を逸らしてそんなことを言う。
「な、慣れるまで練習するか!」
「え!?・・・そ、そうね」
再び唇を交わす。と、大胆にもクラコの舌が俺の口内へと進入してくる。
俺も応え、口の中で舌を絡め合わせーー。
「三重ちゃ〜ん!凌駕ー!ごは〜ん!」
部屋のすぐ外から聞こえた姉ちゃんの声に、思わずガバッと顔を離した。
「ど、どうしたの?」
なぜか不思議そうに訊いてくるクラコ。
「ご飯、できたってさ」
「え・・・?あ、気付かなかった・・・呼ばれてたの?」
「お、おう・・・」
気付かないくらいキスに夢中になっていたのか?やはりムッツリ・・・?
「ねぇ」
俺の上からはどかずにクラコが一言。
「二人きりの時は、名前で呼び合いましょうよ」
「べ、別にいいけど」
「・・・凌駕」
クラコが呼んだので俺もクラコの名前を言おうとしたが、なんともタイミング悪くど忘れしてしまった。普段は覚えている・・・はずなんだけど。