第三話-5
「僕の知り合いに烏丸(からすま)って人がいるんだけど。その人、職業相談なんかもしてるんだよね。良かったら話しておく?」
「え、ああ・・・頼む。というか、なぜそんな人と知り合いなんだ」
「ま、まあちょっと色々あってね」
怪しい。何者なんだその烏丸さんって。
「その人、どんな人?」
「ええと、歳は23だったかな。女の人なんだけど、綺麗で優しい人だよ」
「まさかヨッシーの彼女じゃあるまいな」
「残念だけど違うよ。僕、年上は好みじゃないし」
どういう経緯で知り合ったんだ。そのことを尋ねようとしたところで、部屋に着信音が鳴り響いた。というかクラコから着信だった。
「ハローマイハニー。どうしーー」
ツーツーツー・・・言い終えるより先に切りやがった。電話してきたのは向こうなのになんて酷い。
「あ、僕のほうにきた」
「何っ!?」
俺からの、じゃなくて俺への電話は切ったくせに、ヨッシーには電話するというのか!?
俺は腕でバツ印を作る。俺がここにいることは話すな。そういう意図で。
「もしもし。え、リョウ?目の前にいるけど」
ヨッシーーーーーー!!!
「え?代わらなくていい?むしろ絶対代わるな?新しいね」
クラコめ。恐らく『マイハニー』と言ったことを気にしているのだろう。怒っているのか照れているのかまではわからないが。
「貸せ!」
ヨッシーから携帯電話を奪い取る。
「クラコか?俺に用事なんだろ?」
『すいません。どこのどなたですか?』
「なんだと?」
そう言われて一瞬別人なのかと考えてしまったが、今の声はどう考えてもクラコのものだった。
「初めまして。俺はお前の彼氏の寿 凌駕だ」
『いいからヨッシーに代わって』
「それが彼氏に対する態度か!?」
『うるさい。私はヨッシーに電話したのよ』
「その前は俺に電話してきただろう!?」
『はいはい。寂しがり屋のリョウとは後で直接話すから、さっさとヨッシーに代わって』
「く・・・!」
俺は渋々ヨッシーに携帯電話を返す。
「ん?直接・・・?」
直接って、電話でじゃなくて向き合って話すってこと、だよな?もう夜の6時過ぎだが、どこで話すのだろうか。