Present-12
「おぉ・・・もうそんな時間か。これではサウスフィガロまで帰るには相当遅くなるか・・・・。
では領主のご厚意に甘えさせてもらうかな」
「それではこちらへ」
壁にかかった時計の針が夜の10時になろうとしているのを確認し、
エドガーはあくびを噛み殺しながら案内に従う。
お付きの侍従や侍女数名を従え、ホールに残る人々の会釈を受けながら人混みから抜け出る。
「時にホスト役の領主殿の姿が見えぬな」
「主については身体の疲れもあり、先に退出しております。明日朝食の席をもうけてあります。
ご挨拶はその時にと」
「そうか・・・・・」
ホールを抜けて人影の少なくなった渡り廊下に出た時、エドガーはセリスの姿が見えないことに漸く意識が向かった。
「セリス様につきましてもお疲れのようでしたので、こちらで館の別棟にご寝所を用意させていただきました。
もう恐らくはお休みではないかと」
「そうか、何から何まで面倒をかける。明日になったら、私の方からご領主には一言礼を言っておかねばならないな・・・・・」
セリスの安否が分かったことで、
エドガーは漸く安堵のため息を吐きつつ1人ごちた。
気が緩んだせいか、頭の中がぼんやりとした感覚に襲われる。
そんな感覚を振り払いつつ、エドガーは吹き抜けの廊下で夜のやや涼しい風を頬に感じながら歩いていた。
庭を挟んだ反対側に煉瓦作りの2階建ての建物が見える。
見た限りカーテンがかかった5つの窓が見えるが、
エドガーから見て1番左側の窓がぼんやりとした薄暗い灯りがついているのが分かった。
あれが別棟で案外あの部屋がセリスの部屋だったりしてな――――
そこまで深く考えることなくエドガーはすぐに視線を前方に移し、渡り廊下の先にある本館の入口を通り抜けていた――――
島島島島島島島島島島島