Present-10
―――ガチャッ・・・・・
―――キィィィィ・・・・
「 !!! 」
部屋の隅から響いた無機質な物音に、セリスの身体は無意識に身震いして瞬間的に硬直した。
室内の空気を通じて感じる人の気配と聞き覚えのある特徴的な鼻息。
「・・・・・・」
セリスはゆっくりと顔を上げた。
その視線の先に立っていたのは。
「あ・・・あなたは」
「やはり箱の中身を開けられましたね、セリス様・・・・・」
先程セリスを残して退出した筈の老領主。
セリスの傍らに置かれたランプの薄暗いランプの光に照らされた彼の表情。
光の当たり具合で黒い影の部分で半分が覆われているとはいえ、そこには大きな感情の起伏は見られず、発する言葉は抑揚なく淡々としたものだった。
だが今のセリスにとってはそれは領主自身の内奥に秘めていた“欲望”をかえって浮き上がらせる結果となっていた。
平然を装いつつ、彼の瞳の奥には今まで見せることのなかった炎がくすぶって見える。
それは先程まで室内の様子を盗み見し、室内での情景を目の当たりにすることによって興奮し煽られた“炎”。
「・・・・・・」
向かい合うが故の息苦しさをこらえつつ、セリスはさりげなく下腹部から指を引き抜きスカートの裾を整える。
―――ジュポンッ・・・・
思わずゴクリと唾を飲み込んでしまったセリスの喉仏の動きを、
目の前の領主は果たして気づいたかどうか。
そしてセリスの視線と沈黙に動じることなく、一歩また一歩と歩み寄ってくる領主。
たまらずセリスもソファから腰を上げ、ジリジリと後方にあとずさりする。
しかしすぐにセリスは背中に部屋の壁が当たるのを感じた。
だがセリスは恐れより先に今まで感じなかった期待感と“胸の高鳴り”を感じていた。