ニンゲンシッキャク-27
「忘れ過去」
ワカツキ トシロウ
俺は、まだお前が忘れられないんだ。
お前は、良くも悪くも俺に影響を与えた唯一の人間だ。だから、今でも期待しているんだ。お前は死んだんじゃなくて、「ここ三年の間にちょっとばかし旅に出てましたー」なんてひょっこり出てくるつもりだろ。「ヘーイ、サプライズだぜ!」なんておどけて、続け様に「ただいま」とか妙に青春風味を出しちゃう感じの。そうなんだろ、いつも馬鹿みたいに俺の事を待たせやがって。何で、居眠り運転のトラックなんかに轢かれるわけかな。そこがお前、おかしいぜ。自分で言ってただろうが、「主人公は俺!」って。顔だって、お前の事をずーっと見てたのに。滅茶苦茶で、誰だか解らねぇっつーの。着てた服だけで判別されて。お前、やるせなくねぇの? こんなにお前の事ばっかり、頭から離れねぇのは俺だけなのか? っていうか、何で深夜にコンビニなんか行くわけ? ほーんと、お前も俺もバカ! 最強のバカ! 二人揃えば何でも出来るんじゃ無かったのかよ、最初で最後の俺の親友。
思い出すよ、お前の葬式。俺、全然泣けなかった。カラッと晴れた、いい天気でさ。周りは皆泣いてんのに、俺だけ泣いてねぇの。しかも、遺言は自分の灰を海へ撒け? 死んでも魚の餌か、大バカ野郎。行かせねぇよ、お前は俺の中で生きてろ。ずっとだ。無期懲役の刑。そう思って、俺はお前の灰をこっそり舐めたんだ。お前、俺がこんな事するなんて思って無かっただろ。せっかくだから、教えてやるよ。お前の灰は、マジで苦い。どれだけ変な物食ってたのか、訊きてぇよ。
さーて、今年も過去を清算しに行きますか。
「人間失脚」
イヌガミ ユウジ
本当の、人間失脚とは誰でしょう。
恥の多い生涯を送って来ました。いえ、これからも恥の多い生涯を送って行く事でしょう。この話をまとめた狂人を知っているのは、後にも先にもいないでしょう。
多分、皆神様みたいないい子だった事は間違いありません。
他人の前では面白おかしくおどけて見せるだけで、本当の自分を晒す事の出来ない画家の大庭葉蔵が人間失格なら。
さて、人間失脚は。
あなたの奥深くこそ、知る。
一つ、伝えよう。質問を質問で返す奴は最低か最悪だ。
………END?