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ニンゲンシッキャク
【二次創作 その他小説】

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ニンゲンシッキャク-26

「弓削さんは、自分が生きていると思いますか」
「取り敢えず、生命維持活動は行っています」
「そうですね、まず心臓を動かして呼吸をしませんと。生物学上、死んでいる事になりますから……」
先生は湯気に眼鏡を曇らせながら、コーヒーを啜った。そして、バキッと音を立てて煎餅を半分に折る。
「硬いですが、どうぞ歯を折らないように」
袋の口が、わたしの方に向けられる。
「お構いなく。前進先生は、生きていますか?」
「しかし、おかしな質問ですよね。生きているか、死んでいるかなんて。そうそう、知っていますか。死ぬ瞬間は、痛いか痛くないか」
折った煎餅を、口に入れる先生。
「え……、痛いんじゃないですか。死ぬ瞬間でしょう?」
「そうですね、それは死因にもよりますが。どうですかね、安楽死の場合だったとしたら。ゆっくりゆっくりと、心臓の鼓動が弱まっていく。そして、本人も知らないうちに」
「先生は、何が言いたいんですか」
わたしは、先生を睨み付けた。もう年齢なんて、生徒と先生なんて関係無い。今ここでは、意見を言い合う一人の人間にしかカウントしない。
「解らないままでも良い事は、たくさんあるかもねという一例かな。……あ、そんな恐い顔しないで。そうだね、ぼくが生きていると思うのは……生産しているからかな」
「生産……、わたしは自分でまだ学ぶ意欲があるから生きていると思っていました」
「ええ、それも一種の生産だと思います」
「わたし、まだ生きているんですね」
「長生き出来ますよ、考え深い人は長生き出来ます」
わたしは、深く息を吸い込んだ。
「前進先生、また……来てもいいですか?」
先生は驚いた顔をしてから、笑って答えた。
「勿論ですよ」

 それでも、わたしは生きている。



*真剣10代しゃべり場
独り善がりを発言する場、教育テレビで放送。
*生死 生死は、現在脳死を一般的に見ている。
*殺人 法律によって一応、定められている。そして、一応守られている立場にある。
「幸せの仕合せ」
   ヨシカワ エイジ



 ある牧羊家は言いました。土と羊がいれば、幸せだと。

 ある人は言いました、幸せになれるのは限られているのだと。

 幸せ、って何ですか。
あなたは、幸せですか。
ぼくは幸せなのですか。

 幸せは、広くて浅く。狭くて深い。人それぞれの世界。好きな人と一緒にいられれば、幸せですか。美味しい物を食べられれば、幸せですか。お金があれば、幸せですか。健康ならば、幸せですか。

 幸せは、遠くて近くに無いのかもしれない。

 有名になれば、幸せですか。夢が叶えば、幸せですか。幸せの基準は何ですか。平均値は幾つですか。それは、普通の様に曖昧で納得出来ず。不安の塊の様に、重く圧し掛かり。人を掻き立て、走らせる悪意の単語。誰もが近付きたい場所であり、座標が不安定な位置。そこへ、行きたい様な行きたくない様な。行っても、解らない様な。

 行き詰まり、シンドローム。


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