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ニンゲンシッキャク
【二次創作 その他小説】

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ニンゲンシッキャク-20

「ところで、何用ですか? ラッピングをしますので」
「亡くなった妻の誕生日でね、こういう場合は墓参りになるのかな」
「いいえ、プレゼント用にさせて頂きます。奥様の誕生日でしょう、それは贈り物です」
「以前、他の花屋に行った時は墓参りと言われたのだがいいのかな」
ほんの少し、照れくさそうに笑う老紳士。
「ええ、当然です」
何となく、前進先生に似ていた。
「……妻は、薔薇が好きだった。そして、ブルーローズ・プロジェクトの一員だった。知っているかな、君は若いからね。アメリカの方での実験だったらしいが、絶対に無理だと言われていた青い薔薇を作る為に集められた植物学者の一人だった。だがね、結局青い薔薇を見ることなく死んでしまった。最後に妻は言ったよ、薔薇は矢張り赤ねと……ああ、すまない。話し過ぎてしまったね。お幾らかな」
良い事、思いついた。
「あ、あの……少しお待ち下さいませんか」
「ああ、いいとも」

「お待たせ致しました、八千円になります。それから、これはぼくからです」
「青い……薔薇」
勿論、元々青い物では無い。白い薔薇に、青のラッカーを吹き付けた物だ。ちゃちい、偽物。
「大したものではありませんが、サービスです」
「これはこれは……、ありがとう」
「いいえ、こちらこそ」
貴重な話をありがとうございました。
「遠慮なく貰っていくよ、妻も喜ぶことだろう。では」
薔薇の花束を抱え、老紳士は店を後にした。
「ありがとうございました、またの御来店を御待ちしております」
俺は、いつまでもいつまでも老紳士の後ろ姿を見送っていた。

 ありがとう。



*青い薔薇 英語で、絶対的に不可能な事。本来、薔薇には青の色素が無い。しかし、現在はほんの少しだけ青っぽく見える様な薔薇もある。
*ブルーローズ・プロジェクト 半分本当で、半分嘘。
「未来に馳せて」
  ベッショ ユカリコ



 前進先生、と呼び始めたのはわたしです。

「前進先生、好き」
「ありがとう、別所さん。生徒から慕われているというのは、いいものですね」

 まるで、狐につままれた様だった。そして、腹が立ってきた。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。鈍感。前進先生のバカーッ!

「前進先生って、良いよねー」
学生食堂で、よく飛び交うピンク色の話題。
「うんうん、飾ってない所とかー。優しい所とか、もうサイコーだよね。あんな彼氏がいたら……良いよねぇ」
「もう、造りが違うよね」
「大体、他の先生より若いし」
「同じ人間か、って思うもーん」
「思う思うー」

「わたし、前進先生のこと好き」
わたしは、Cクラスの友人に罪の告白をする様に言った。友人はポカーンと口を開けたまま、わたしを見た。
「は……? マジ?」
「超大マジ」
「な……ッ、だって相手は先生じゃん」
学生食堂の一角で、こんな話をしているとは思わないだろう。


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