失われた貞操-1
男が草むらから出て行って暫くたっていた。
美奈子が手櫛で髪を整えながら何もなかったようなそぶりで芋籠を背負って家に帰って行った。
そのまま下着と浴衣を取ると野良着姿で風呂場に向かうのだった。
昨夜の残り湯は冷めていた、洗い場に片膝を立て座ると桶で汲んだ湯で汚された体を流すように何度も何度も身体に掛流した。
一郎と契りを結んで18年、貞操を護ってきてこんな形で貞操が失われた事への無念さ
をしみじみと感じる美奈子であった。
その夕方、義兵は仕事から帰って来て少し家の様子が変であることに気がついた。
玄関の明かりが消え、美奈子の姿が見当たらない、いつもであれば勝手場に立ち夕飯の支度の姿がある、義兵は美奈子を呼んだ
「美奈子・・・・美奈子」
「はーい・・・」
力ない声が部屋の奥から聞こえてきた。
「いるのか」
義兵は安堵しながらも美奈子の様子が普通でないことを察した。
その晩、次郎からの連絡もなく夕食がすっかり遅れていた。
「美奈子、どうした体調でも悪いのか」
義兵はいつもと違う空気を察しながら言った。
「ええ・・・ちょっと」
美奈子は下向き加減に目を伏せ応えた。
「無理はするな、飯は適当なもので済ますから」
「いえ、支度は済ませてあります、次郎さんを待ちますか・・・」
美奈子は冷蔵庫から酒のつまみと煮物を鍋からよそって卓袱台に並べた。
「先にやろう、いつ帰るか連絡ないんだろう」
「ええ」
「義父さん私にもお酒頂いてもいいですか・・」
「ああそうだったな飲め、お前も今日は疲れたろう」
義兵はやさしい言葉をかけて自分でつけた二合の熱燗を差し出した。
珍しく浴衣着の寝巻き姿の美奈子はぐい飲みに注そがれた酒を一気に飲み干した。
「美奈子いけるな・・・」
義兵は美奈子の飲みっぷりのよさに驚いた。
「もう一杯いくか」
「頂きます・・・・」
やはりいつもの様子ではない、何かあったと義兵は察した。
「今日、猿はどうだった」
「・・・・・・」
「義父さん、私、子供もいないし今後の事考えていたんですけど」
美奈子はすでに頬を赤らめピンク色に染まった肌を見せながら言った。
「そうだな、この間の件もあるしな」
「次郎さんと仮に一緒になっても、私はこの歳では子供も産めませんし・・・」
美奈子は愚痴ぽく言いながら更に手尺酒を口に運んだ。
「どうしたんだ今日は・・・いつもの美奈子じゃあないぞ」
次第に酔いが廻ってきたのか美奈子の目がうつろになってきた。
「おい、大丈夫か、こんな所でつぶれるな」
「いいんです、好きなようにさせてください」
美奈子は義兵の横に砕けるように身を横たえた。
肉厚な身体を包む浴衣着は温かな体温を充満させながらしっとりと濡らしている。
そんな姿で横たわる美奈子は男の欲情を掻きたてずにはいられない
義兵は時計を見た
8時少し廻っている、いつ次郎が帰るやも知れない。
しかし浴衣の腰紐を獲れば今すぐにでもこの肉体を我が物に出来る、しかしそれは舅として許されない事なのだ。
心の葛藤は続いた、このままこの機会を失えば二度と欲望を叶えられないかも知れない。
ああ、俺は・・・時が進むに従って焦った。
義兵は顔を美奈子に寄せてみた、甘すっぱい体臭が堪らなく鼻を刺激した。そして寝息とともに膨らむ胸と浴衣の裾から覗く白い肢体がまばゆい。
義兵は迷いながらも居間の隣の美奈子の部屋に連れてゆく事にした。
「おい、こんな所で寝たら風邪をひく、さあ立て今日は俺が世話する」
そう言って美奈子を追い立てるように身体を引き起こした。
弾力のある身体が肌に感じる。
「すみません・・・」よろけながら義兵の体に寄りかかってきた。
「さあ、お前の部屋に行くぞ」
義兵は足で部屋の戸を開けてすでに敷かれてある布団に倒れ込んで行った。
柔らかい乳房が義兵の頬に触れたとき義兵は浴衣の紐に手をかけた。
居間の戸の隙間から光が入り暗い部屋は微かな明かりをかもし出している。
腰紐は簡単に解かれた。
懐が開かれ暗闇の微かな明かりに豊満な白い胸が目に浮かぶのであった。