夏休みはやめられない-3
理人がその話を萌恵から聞かされたのは、最後に図書館へ寄った日から2日後の朝のことだった。
先の2人とおなじく、理人も原因不明の熱を出して寝込んだのだが、翌日にはすっかり元気になったと言う。
そうしてようやく4人が顔をそろえて、それぞれが体験した出来事を話すために、近所の公園に集った。
「あれは幽霊なんかじゃない」
と言ったり、
「あんなきれいな幽霊はいない」
と赤面したり、
「きっと大橋先生の冗談だよ」
などと異議ばかりが飛び交う。
「あっ、そういえば」
理人が突然立ち上がると、すぐそばの木から何匹かのセミがおしっこをしながら飛び立った。
「おれ、幽霊の写真、撮った」
「ほんと?」
「いつの間に」
「見せて、見せて」
みんなからの好奇の声にあおられる中、理人は携帯型ゲーム機の画面を膝の上でひらいた。
電源を入れると、静止画データのアイコンをタッチする。
あの日に撮影した画像が確かに保存されていた。
その中の1枚を画面いっぱいに拡大した途端、そこにいる全員の息を呑む音がした。
「なんだよ、これ……」
「マサトくんのエッチ……」
「幽霊よりヤバいよ……」
そして最後に理人が、
「この画像、絶対おかしいよ……」
誰よりも険しく言った。
あの図書館の第4書庫で遭遇した人物は、今井遥香と名乗っていたはずなのに、そこに写っている女性は、果たして、クラス担任の、大橋美希だった。
真夏の太陽に負けないくらいの衝撃が、4人の目の奥にまでビシバシと迫ってくる。