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居場所
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居場所-6

「真理奈、着いたぞ」
まだ考えもまとまらないまま、私たちは約束の場所へたどり着いた。
そこは、私達が通っていた中学校…。門を抜けて、校庭に出る。
みんなが集まるときは大概ここだった。田舎で遊ぶ場所が無かった私達は、ここで話し合うことが多かった。
もうみんな社会人となった今では、中学校に来ること自体が久しぶりだった。なくなってしまった私達の居場所…。
校庭を見回すと、サッカーゴール辺りに人影を見つけた。
「大丈夫なのか…?」
私が心配なのか、松本君が弱く聞いてきた。
「お前が会いたくないってんなら…」
「私は大丈夫、ありがとう」
そして、人影の方へ私は足を進めていった。


空を見上げていると、後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえた。
ゆっくりと振り向くと、松本と真理奈がいた。

「葬式以来だな…」
「うん」
「髪の色、変えたんだな」
「うん…」
「久しぶりに来ると懐か…」
「隆一…話って何?」
真理奈の顔を見つめる。不安と怒りが混ざったような複雑な表情…。その表情は見てて痛々しかった。
やはり俺の自己満足なのか?俺が真理奈に謝れば全て終わるなんて、甘い考えなのだろうか…。松本は真理奈の横でずっと黙っていた。

「…正人のことは悪かった」
「別に隆一は悪くないじゃん。なに謝ってんの?」
真理奈は必死になにかに耐えているようだった。
「悪いのは車の相手でしょ?別に隆一は悪くない…悪く、ない…」
「俺が、あいつを止めていればよかったんだ…。まだあいつの方は少し酔ってたんだ」
「…じゃあ、なんでその時止めなかったの?」
「……ごめん」
「…ッ!あんたが!!あんたが正人を止めていれば…私はこんなに苦しまずにすんだ!!あんたが殺したのと一緒じゃない!!」
真理奈の叫び、あの時の事が鮮明に蘇る。正人にすがりついて泣く真理奈に、俺は一言もかけられなかった。

「あんたが悪いんじゃん!…なんで正人と一緒にいたの…?」
震える声で真理奈は思いを叩きつける。俺は何も言えなかった。

「私は今でも隆一…アンタが憎いの。どうしようもないくらい…」
「そう、か…」
真理奈の本音、思ってはいたが、やはり直接言われると辛い。そこには、昔のように笑いかけて話す真理奈の姿はなかった。ただ、俺のことを敵とばかりに睨むその顔には、先程とは比べ物にならないくらいの怒りが見えていた。
真理奈、お前はこんなにも苦しんでいたんだな…。ごめんな、正人を守れなくて。悲しみが胸に溢れるが、言葉にならない。

「いいかげんにしろ!真理奈!」
突然、今まで黙っていた松本が口を開いた。
「隆一だって十分に苦しんだんだ…これ以上責めるな。友達だろうが!」
松本の一言が凄く嬉しかった。
「わかってるよ…。わかってるけど…、じゃあ私は誰を憎めばいいのよォっ!」

胸に痛みが走る。俺は、また壊してしまったのか。真理奈の居場所を…。俺のことを憎むことによって保たれてきた精神の居場所…。目の前で取り乱している真理奈を見て、思った。真理奈の人生を変えてしまったのは俺かもしれないと…。


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