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居場所
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居場所-7

あの時と同じだ。俺は、また真理奈に言葉をかけてやることが出来ない。
俺は、目の前で泣きわめいている真理奈をただ見ていることしか出来なかった。
と、真理奈の肩に松本の手が乗せられる。真理奈は、泣き腫らした目で松本を見る。松本は話し始めた。
「もう、誰も憎まなくていいんだ。そんなことはしなくていい…」
真理奈は、か細い声で必死に松本に問いかけた。
「私に居場所はあるの…?」
「俺がなる…俺が…居場所になってやる」
真理奈は、松本にすがりついて泣いた。
子供のように、母に甘える子のように…。

「…隆一。お前に居場所はできたのか?」
松本が聞いてくる。頭のなかに一番に浮かんだのは、取り乱した俺を必死に止めていた麻衣ちゃんの顔だった。
「…わからない」
「後で、正人の所に花を手向けに行くよ。真理奈も連れてな…」
「わかった」
もう、俺の居場所はここにはない。俺は、学校を後にしようとした。
「隆一!」
松本の声に振り向く。
「辛くなったら帰ってこいよ!ここにだってお前の居場所はあるからよ!みんな待ってっからよ!」

涙が出た。昔のようにはなれないが、それでもみんなは待ってくれている。ここに、俺の居場所は在ったのだ。
「隆一!!」
真理奈が、泣き声で俺を呼ぶ。
「ごめんね…ごめんね!」
「気にしてねぇよ!じゃあな!」


終電に揺られながら、さっきのことを思い返す。真理奈との溝は、まだ深い。また衝突するかもしれない。でも、また昔みたいになれる。そう思った…。今度から、辛くなったらあの街へ帰ろう。友達と馬鹿騒ぎをして嫌なことを忘れよう。俺の帰るべき場所は確かに在ったのだから…。

駅を出て、俺は携帯を開いた。電話をかける。彼女は、俺の居場所になってくれるのだろうか…。
「もしもし、瀬名さん…?」
「ただいま…」



たとえどんなに傷つき、挫折しても、居場所在る限り人は立ち上がれる…。そんなお話。


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