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居場所
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居場所-5

俺の一言で松本は悟ったてくれた。ゆるんでいた顔が険しくなる。
「わからねぇ、聞いてみないことには。ちょっと待ってろ。聞いてきてやる」
「もし繋がったら言っといてくれ。今夜みんな集まってた場所に来てくれって。俺は時間潰してくるよ」
「わかった。連絡とれたら電話する」
松本の言葉を聞いて、俺はファミレスを後にした。


故郷の道を歩いていると、不意に懐かしさにかられる。
(そういや、この道帰りにいつも正人と一緒に帰ってたなぁ…)

約束の時間までまだ余裕があったので、いろんなところを回ってみた。みんなでよく遊んだゲーセン。学校近くの河原。そして高校…。久しぶりに覗いてみると、当時の担任が出てきた。
当時、あまり成績、生活態度ともに優秀でなかった俺は、事あるごとにこの人に怒られていた。俺を大学に進むように説得したのもこの人だ。あの頃はうざったらしく思ってた言葉も、今なら少しだけ理解できるような気がした。
先生と一通り話をして、高校を出た。正人の事を聞いてこなかったのは、あの人なりの優しさだろう。その気遣いに少し胸が熱くなった。

突然、携帯が震えだした。とってみて画面を開いてみる。松本からだ。

「もしもし」
「隆一、真理奈が、八時に中学校でだってよ…」
「わかった…。松本、お前はどうするんだ?」
「俺も一緒に行くよ。お前らが二人で会ったら、まとまる話もまとまらなそうだしな」
「へっ、お節介野郎が」
「じゃあ隆一、八時に…」
「わかった…」

携帯を閉じて空を見上げる。空はもう暗くなって、星が瞬いている。八時まであと一時間…俺は真理奈に何が言いたいのだろう。俺が何か言ったら、また真理奈は苦しむかもしれない。
俺は正人の死と向き合うために、過去にケリをつけるために来たはず。けど、それは単なる自己満足なのかもしれない。
直前になってまとまりがなくなった思考。そして、真理奈に会うことへの不安を抱えたまま約束の場所へ向かった。



隆一と会う。正人の葬儀以来私は隆一とは一度も顔を合わせなかった。だから、松本君からこの話を聞いたときは緊張した。
「乗れよ。隆一が、お前に会いたいってさ」
もう過ぎたこと…。隆一は悪くない。私は、正人が死んでからそう考えた。考えなくちゃいけなかった。
松本君の車の中で、私はあの時の事を思い出していた…。

電話で知らせを聞いた私は、すぐに正人の搬送先の病院へ向かった。正人の姿を見たとき、私は信じられなかった。手のこんだジョークかなにかだろうと、初めは笑ってしまった。けど、正人は何時までも動かなかった…。隆一はずっと黙っていた。
認めたくない事実、そして私は隣でうつむいている隆一を睨みつけた。私は理由も聞かずに彼を罵った、叩いた、叫んだ。まるで彼が全て悪いかの様に。

それでも、隆一は黙っていた。涙で視界がぼやけていく中、私はあの台詞を言ってしまったのだ…。

「あんたが死ねばよかった!」

今でも後悔している。何故あんな言葉を言ってしまったのか。その言葉を私に吐かれても隆一は黙っていた。

隆一は何も悪くない、悪くないはず…。でも、心の奥底にはまだ憎しみの感情が確かに残っている。あの言葉が、未だに私の中に隆一への憎しみを残している。
何を話せばいいんだろう。そんなことを考えていると、車が止まった。


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