個別指導は恋の味-8
「外国の新聞も読んでみよっか?」
「英語はまだちょっと苦手なんだよなあ、おれ」
萌恵と理人が手を黒くしながら新聞の銘柄を吟味していると、
「遅くなってごめん。トイレが混んでた」
帰ってくるなり言い訳をする博士。
遥香と2人きりで、あんなことやこんなことをしているうちに、およそ1時間近くは経過しているはずだった。
「なに言ってるの?まだ5分も過ぎてないよ」
自慢の腕時計をかざして萌恵が言う。
「それってほんとう?その時計、こわれてない?」
「ちゃんと動いてるよ。だって、ほら」
萌恵が視線を向けた先には大きな掛け時計があり、それは間違いなく正確な時刻を指しているようだった。
萌恵の腕時計の時刻とも一致している。
「変だなあ、1時間くらい経ってると思ったのに」
「変なのはハカセだよ。そんなことよりさ、こども会議、はじめようぜ」
リーダーシップを発揮して、理人が新聞記事の1つを指差す。
「今日は、これ」
そこにみんなの視線が注目する。
クーラーのおかげで、夏休みの課題はよくはかどった。