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青い夏休み
【その他 官能小説】

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おかしな熱中症-1

 夏特有の気まぐれな通り雨が過ぎていった朝、理人と萌恵は湿った歩道を図書館へ向かいながら、帽子の下でむずかしい顔をしていた。

 ついさっき、河合家の肝っ玉母さんから博士の様子を聞いたかぎりでは、その症状が健太郎のときとよく似ていたからだ。

「変だよな」

「変だよね」

「昨日はあんなに元気だったのにさ」

「ボッチくんの夏風邪がうつったのかも」

「ひょっとして……」

「なあに?」

「うちの姉ちゃんが言ってた、女の幽霊にでも遭ったのかな」

 ムシムシした沈黙がおとずれる。

「夜ならまだわかるけど、昼間に幽霊が出るなんて聞いたことないよ」

「だよな」

 4人いたメンバーも理人と萌恵の2人だけになり、この企画は一時休止したほうがよさそうだなと理人は思った。

 けれども萌恵のほうは案外、退屈している様子もない。

 根っからの勉強好きな性格はもちろん、理人に対するとくべつな気持ちも少なからずあるわけだったりする。

 小学生とはいえ、恋愛感情の芽生えは男子よりも女子のほうがずっと早い。

 女子同士の共通の話題といえば、理想の男子の条件などなど、大人顔負けである。

「さっきから人の顔ばっか見て、なんだよ?」

「別に見てないよ」

 2人は図書館のいつもの席に距離をおいて座り、いつもと違う雰囲気を察しながらも、それぞれの新聞に視線を落とす。

「ちょっとだけ、別行動にしようか?」

 理人が小声で言った。

「そうだね」

 萌恵も同感だった。

 少年探偵団て、きっとこんな気分なんだろうな──。

 1人で勝手に盛り上がっている理人は、館内すべてのトイレに不審な点がないか捜査することにした。

 一方の女探偵の萌恵は、この図書館に関連する事件や事故が過去に起きていないかどうかを調べるために、視聴覚ルームの端末を使って、古い新聞記事を検索してみようと思った。

 2人が2人ともそれぞれに思うところがあるので、スーパー小学生の名推理が実を結ぶのも、もはや時間の問題と言えた。


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