まさかの自由研究-11
トイレに行って帰ってくるまでに30分も40分もかかるのは、どう考えても変だろう。
みんなにどうやって言い訳しようか悩んでも悩んでも、健太郎の脳みそは何一つ答えを出してくれない。
「どうしよう……」
そうこうしているうちにカウンターの前をぼんやりと通り、新聞を取り囲む仲間の元へと帰還した。
いちばん最初に健太郎に気づいたのは、萌恵だ。
「ボッチくん、早かったね」
「えっ?」
唖然とする健太郎。
おれ、早かったの──?
「速いのは走るときだけかと思った」
博士も付け足す。
このへんてこりんな現象は何だ?
みんなしておれをからかっているのか、それともほんとうに時間がどうにかなっちゃったのか。
わけわかんないよ──。
とにかく席に着いて輪に加わった。
体はここにあるのに、心だけはあの部屋に置きっぱなしのままで、口は金魚みたいにずっと半開きだし、人の話は上の空。
「おい、ボッチ、ちゃんと聞いてる?」
「うん、聞いてる」
みんなが新聞デビューしているうちに、おれはあんなことをデビューしちゃったもんな。
やばい、またドキドキしてきた。
今日、ちゃんと眠れるかな──。
そうやって遥香との濃密な記憶が頭から離れないまま、持ち寄った夏休みの宿題をチビチビと進めて、正午過ぎには解散となった。