投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

THANK  YOU !!   ver. distance loveの最初へ THANK  YOU !!   ver. distance love 3 THANK  YOU !!   ver. distance love 5 THANK  YOU !!   ver. distance loveの最後へ

THANK YOU!!-4


『じゃあ、会えるのか?』
「うん、詳しいことはまだ分からないけど、少し時間貰えると思う」
『良かった。なら、会おう』
「勿論!・・あ・・」

笑顔で電話口の相手に対して頷いていると、ふと自分に向けられている視線に気付く。
先程、コンサートの事を話していた仲間たちからで、とても優しい笑顔を浮かべて瑞稀をずっと見つめていた。
途端に瑞稀は恥ずかしくなった。

「じゃ、じゃあ、細かいこと分かったらメールするね!じゃ!」
『え、お、おい、瑞稀?』

慌てたような拓斗の声が聞こえたが、それに答えずに電話を急いで切った。
息を大きく吐き出すと後ろを振り返って真っ赤な顔で仲間たちをキッと睨んだ。

『・・何で見てるの』(ここから『』は英語を表す)
『いやぁ、ミズキが彼氏とどんな会話をするのか気になってね』
『そうそう。それなのにミズキったら、さっさと切っちゃって』

みんなが見てたからでしょうが!!という言葉をやっとの思いで飲み込んで、ミズキはケータイをポケットにしまった。
個人のレッスン室に行く為に荷物をまとめていると、仲間が構わず話しかけてくる。

『そういえば、ミズキ。キミの彼氏は日本での大会を優勝したようだよ』
『うん、この間のメールで言ってた』
『まぁ。さすが、早いわねー。』
『・・・エンディ。それ、何のからかい?』

楽譜類をバッグに入れている手を止めて、瑞稀は自分の傍まで来ていた女性に返す。
瑞稀よりも10歳程年上のその女性は金髪のサラサラとした髪を揺らして笑う。
エンディ・シャルテスト。
主にホルンを担当する、金管楽器のスペシャリスト。そして、この楽団の中で一番瑞稀と仲が良い人。

『さぁ?上手くいっていて何より。って意味よ』
『・・褒められている気がしないんだけど』
『そんなことないわよ』

返す言葉が見つからずに呆れていると、仲間から拓斗のメールを見たいと声が上がった。
思ってもない無茶ぶりに瑞稀が戸惑っている間にも、同じ事を考えていた仲間から同じ言葉が上がっていく。

『ミズキ、良いじゃない!』
『いや、何が!』
『見せて!』
『・・・・』

何人もの仲間に詰め寄られ、瑞稀はこれ以上の被害を避けるためにケータイを差し出した。心の中で拓斗に謝りながら。
ぶら下がった望みのおもちゃに食いつく仲間たちを横目に、瑞稀は深く溜息を吐いた。
どっと疲れを身体に感じながら、片付けを済ませる。
その間、仲間たちはきゃあきゃあ騒いでいた。いつの間に移動したのか、自分の傍に居たエンディもその輪に入って、一緒になって騒いでいた。

「(子供かっての・・。)」

呆れた顔で仲間が満足するのを待っている。ふと、先程の仲間の言葉を思い出す。

‐『キミの彼氏は日本での大会を優勝したみたいだよ』

確かに、拓斗から全国大会に優勝したと教えられた。
メールで素っ気なく伝えられたが、そのあと少しやり取りしてみるとただの照れ隠しが分かったので、暫くからかった覚えがある。
アメリカでは、昔から何か大きな事件や出来事などが無いと日本でのニュースはまず流れない。最近ではスポーツなども取り上げられるようになってきたものの、やはり浅い。
第2次世界大戦の影響もあるのかもしれないが。

「(本当に、すごいなぁ・・拓斗は)」

メールを貰った時の事を思い出して、瑞稀は惚ける。
自分の彼氏が有名になっていくのは自分のことのように嬉しい。だけど、心のどこかには遠くなってしまうんじゃないかという怖さも無い訳ではない。
それを拓斗に気付かれないようにするのは、結構骨が折れる。拓斗は、瑞稀のちょっとした変化にも気付けるから。
何も無いように装うのは大変なんだ。例に、ついこの前の電話。少し黙り込んだだけで何か不快になったんじゃないかと気にされたくらいだ。
そんな優しい恋人を嬉しく思いながら、瑞稀は荷物を片手に騒いでいる仲間たちの手からケータイを取った。

『はい、終了。』
『えー!!』
『まだ良いじゃない!!』

ブーイングを受け、瑞稀は呆れた顔をしつつ『もう帰るから』と言い放った。
まだブツブツ言っている仲間に別れの挨拶をしてレッスン室に向かう。
散々いじられたケータイの中身を確認しながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り返ってると、そこにはこのオーケストラ楽団の責任者。みんながボスと慕う、監督のような人。瑞稀を楽団にスカウトした人。

『ミズキ。少し話しがあるんだけれど、良いかい?』
『・・・はい?』

ボスのもったいぶった言い方に、瑞稀は驚きを隠せず、思わず聞き返した。

『次のコンサートの話だけど・・』
「・・!!」





THANK  YOU !!   ver. distance loveの最初へ THANK  YOU !!   ver. distance love 3 THANK  YOU !!   ver. distance love 5 THANK  YOU !!   ver. distance loveの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前