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「これだけのもんを持っているのなら、彼氏とかいなかったのかな」
黒城が率直な疑問を述べた。
「いたとなると、彼氏とその仲間に集団で乱暴されたってことも考えられるな。しかしこんな画像を見せられたんじゃ、素直に同情できないぜ」
クリックの音が耳の奥ではじけるたびに、パソコン画面の彼女の行為はさらにエスカレートしていく。
白い乳房を両手で支えながら、谷間にバイブレーターを挟んだもの。
ぐずぐずに濡れた局部の内壁をさらしたもの。
女性器の口からピンクローターのコードを垂らしたもの。
愛液をまとった指を舌で受け止めて、粘つく糸を引いたもの。
さらには人の手首ほどもある太いディルドに跨って、深々と腰を落として、背中をしならせる姿。
パートナーの姿が写り込んでいないところを見ると、自慰行為の範囲を越えるものはなさそうだった。
しかしながら徳寺麻美の性癖はどの画像にも見て取れるし、すべて無修正である。
いきなり、目の前の景色に蜘蛛の巣状の亀裂がはしり、音もなく割れていくような幻覚におそわれたのは、黒城だった。
画像の中の若き被写体がいびつな形に歪み、彼の頭を痛めつけていた。
意識が朦朧としていく。
「おい、大丈夫なのか。顔色が悪いぞ?」
小田があわてて声をかける。
「ち、ちょっと酔いがまわっただけさ。帰って寝れば、すぐに治る……」
飲みかけの缶ビールをデスクに残したままの黒城は、眉間に深い皺を刻んで立ち上がる。
頭が重い。
「送って行こうか?」
「いいや、いい……」
小田の気遣いを断って、具合の悪そうな足取りで黒城は帰って行った。