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37℃の夜
【OL/お姉さん 官能小説】

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37℃の夜-1

緩やかな流れの中に私はいた。
流れは穏やかに感じられるがどこか遠くでごうごうという音が響く。

この先はきっと、滝になっているのかも知れない…

目を開けば、そこは真っ白なタイルに囲まれていて眩さに思わず目を細めた。

額にはじんわりと汗。
頭の真上で換気扇が唸り、体の中から滲み出す毒気にこの上ない不快を感じる。

それどころか側面はガラス張りになっていて、目の前にはスカートと下着が重ねらたまま、もどかし気に脱ぎ捨てられている。

少し頭痛がして、私はこのガラス張りのトイレにお尻を丸出しにしたまま、穏やかな流れに置き去りにされていた。


… … … …

東京には空がないと思った。
無数に照らし出すビールの銘柄が入った提灯。
その隙間に見上げた夜空は紫なのかあるいはもっと赤い色をしているのか分からない。

「もうっ、よしなってば。」

「何で?面白いじゃん。」

食べ放題飲み放題1980円に釣られて、試しにと来てみたビアガーデンは熱気と人いきれで「涼やか」にはほど遠い場所に思えた。
女ふたりで席につくと、酔い知れた男たちが通りかかる度に声をかけてくる。

同席するヒトミはそれをいちいち相手にして、手を振ったり絡んだりするのが私はイラだって仕方ない。
本来、ビアガーデンなんて嫌いなのだ。

「あんたオヤジ趣味なの?」

「そんなんじゃないけど、楽しいじゃない。」

ビアガーデンって、これだから嫌なのだ。
シラフなら、初対面の女にとても言えないような言葉で安酒の酔いにまかせた今だけ、老いも若きも競ってちょっかいかけてくる。

軽い男なら軽い男で許せると私は思う。
自分の軽率さにちゃんと責任を持って生きてるからだ。

私たちだってお金払って楽しみに来ているのに、じめじめしたビアガーデンのコンパニオンか何かと勘違いしてる男たちが多いという事が何より不快だった。

エレベーターから降りた時は足が地についてなかった。
もはや、そのあたりからヒトミと二人でビアガーデンを出たのか、誰かと連れ立って出てきたのか記憶が曖昧である。

とにかく足が地についてなくて、気持ち悪くて、タクシーなんかに乗ったら悲惨な事になるのが目に見えていたからヒトミの手前、どこか涼しい場所でモスコでも舐めるふりして回復を待とうとした事だけはちゃんと覚えている。

気がついたら、まさしくここはラブホテルのバスルームで私はとにかくお尻を出したまま、ただ眠りこけていたのだった。


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