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37℃の夜
【OL/お姉さん 官能小説】

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37℃の夜-2

とにかく目の前の下着とスカートを引きずり上げた。
誰となぜここにきて、お尻を出しているのかさえ知れない情況だった。

あわてて着衣を纏ったわけだけど、そこに座っていたがゆえにちゃんと拭いたかどうかまで気が回らず、とりあえずそれどころの話ではなかったのだ。

幸いベッドルームからトイレはちょっとした死角になっていた。
こんな場所にひとりでは来ないだろうし、微かだけど確かに誰かとここに入ったような気がする。

(あの…)

どこのどんな相手か分からないけど、ここは強気に出て圧倒する作戦で行こうと考えた。

「いたの?悪いけど私、帰るわ。」

男には存在感がなかった。
普通の顔で普通の服装で話がどうしようもなくつまんない。
話がつまんないのはこの男の相棒の方でこいつは受け答えさえ、まともにできなかったのだ。

普通の顔で普通の格好ではあるがどんな顔してたかさえ印象に残らないって事は実際にあるのだと思う。

男が眺めているテレビには色褪せた古い画面にオードリー・ヘプバーンだか、昔の俳優が語っていた。
ラブホテルでアダルトビデオ以外の番組があったなんて、この時初めて知った。

「大丈夫?…送ろうか?」

バカじゃないの!?
見知らぬ男から逃れるためにここを出るのに送らせてたら、意味ないじゃないのよ。

そう思った瞬間、その間の抜けた気づかいにクスッときてしまった。
私がどのくらいトイレで眠りこけていたのか自分でも分からないけど、その間ずっと古い映画なんか観ていたのだ。

「いいわよ。…じゃ…ね。」

短めの白いスカートに合わせたゴールドのサンダルを履こうとした。
履こうとしたサンダルはちゃんと左右対象に揃えてあった。

「ね、ここどこ?」

「大久保…あたりかな?
たぶん…」

「えーっ!何でそんなとこ連れてきたのよ?」

男の話をかい摘まむと、私たちはビアガーデンの近くのバーで知り合ったらしい。
それで意気投合して、今からカラオケにでも…という話になったのだが私はすでに泥酔していて、ちょうどそこで帰ろうと思っていた彼がついでに送り届けて帰るという事になったという。

「ヒトミは?一緒にいた女の子はどうしたの?」

「連れの者たちとカラオケに行ったんじゃないかな?…たぶん。」

どんな展開なんだよ?

「でも、何で大久保?」

「君がタクシーでここに来たんだよ。
高速乗ってとか、そこ曲がってとか…」

そう言われてみれば、そんな記憶が微かに残っている。
とにかくデタラメに車を走らせたのだ。
そしたら、我慢できないぐらいトイレに行きたくなって、車窓から見えた地中海風のホテルが自宅に似ているように思えたのだった。

もちろん、私の家はそんなんじゃないけど、トイレさえあればどこでも良かったのかも知れない。

つまりは自分からここに連れ込んだという事になる…

私が呆然と記憶をたどっていたら、男も帰り支度を始めた。

「ちょっと…いいわよ、ゆっくりしてらっしゃいよ。
私は帰るから…」

大久保なんて場所でタクシー拾えるのだろうか?
昼間ならまだしも、夜になると地理さえ分からない。


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