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贅の終焉
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唐突-11

==謝景==

翌月の第一木曜日午後七時
菜穂子は2755室を訪れてチャイムを押した。期待はしていなかった。予約はされていたとしても、藤沢本人はすでにホスピスの
はずである。ホスピスの連絡先は知らされていない。逢うのはここでだけと約束を交わしていた。
ドアが開けられた。菜穂子は驚いて自らもドアに手をかけて引いた。
「おまちしておりました」
中から出てきたのは、ホテルのフタッフであった。やっぱり・・・・藤沢ではなかった。
「藤沢さまから訪問のお客様をお待ちするように言付かっておりました。どうそごゆっくりお過ごしください」

テーブルには菜穂子用のディナーが準備されていた。冷えたワインと共に・・・・
いるはずのない藤沢の姿を探して見渡していると、突然電気が消されて真っ暗になった。
「失礼いたします。藤沢さまからお客様に夜景を楽しんでいただくように伺っております」
27階最上階の大きな窓からの夜景は、ガラスの存在を忘れさせて吸い込まれてしまいそうな畏怖を感じる美しさだった。
目が慣れると 星と月の輝きと夜景の煌びやかな輝きで自分が宙に浮いているような錯覚にもなる。
「きれいです。藤沢さん」
じっくりと輝きを目に収めたあと静かに瞳を閉じてつぶやいた。
「藤沢さんにも見えてますよね」

菜穂子は瞼の中で輝く夜景がにじんでくるのを感じて、目を開けた。
藤沢が準備してくれた食事を楽しもう。
藤沢の最後の魔法を

最後の晩餐を



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