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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第16話-38


「美野里姉さんに、葵を、紹介したいんだ」
「えっ」
「僕の、大事な人……僕の将来を、全部、捧げたいと思っている人だって……」
「!?」
 誠治が発した言葉の意味を、理解できない葵ではない。
「あ、の、それって……」
「まあ、はっきり言えば、プロポーズだね。葵には、僕の子供を生んで欲しいって、本気で思っている」
「!!」
 誠治には、セックスの最中によく“いつか、僕の子供を、生んでください”と、言われてきていた。それが、本気のことなのか、それとも、性の戯れの中で、勢いで発せられたものなのか、葵には判別がつかず、我に返ったとき、聞き返すことはできないでいた。
 だが、今の誠治の眼差しを見れば、戯れを口にしたとは到底思えない。それぐらい、誠治のまなざしは、将来を見据えるように、透き通っていた。
「美野里姉さんに、会って欲しい」
 “人生の伴侶”と考えている女性を、母親に等しい存在に会わせたいというのは、道理の筋道を考えれば、欠かせないことだろう。誠治は、本気なのだ。本気で、葵の将来を、自分の将来に重ねることを求めているのだ。
「葵、どうかな」
「………」
 錯乱した様子はないが、葵は黙って俯いたままだった。何かの葛藤を、彼女は感じているのだろう。
 誠治は審判を待つ気分で、しかし、焦ることはなくじっくりと、葵の言葉を待ち続けた。
「わたし、わたし、は……」
「うん」
「右腕に、傷痕がいっぱいあるし……気分も、波があったりして……こわい夢をみると、お、おもらしも、よく、してしまうし……」
「………」
「そんな、わたし……わたしで、いいんですか……?」
「葵じゃなきゃ、僕はダメなんだ」
 誠治の言葉に、ためらいはなかった。葵が、自分自身のこれまでの過去や、痴態に後ろめたさを感じて、それを拒否の理由にしているというのなら、誠治は全力でその不安を吹き飛ばすつもりだ。
 葵の全てが、誠治にとっては、なくてはならない存在だ。葵が乗り越えようとしていることは、誠治にも同じ“超克”すべき壁なのである。
「まだ学生の身だし、そんなに偉そうなことはいえないんだろうけど……」
「………」
「葵を、愛している。その気持ちだけは、絶対に、偽ったりはしない」
「誠治……!」
 葵が口元を押さえた。それは、“パニック症候群”の発露によるものではない。真摯な彼の言葉に打たれて、胸が痞えて、溢れる涙が起こした嗚咽を、こらえきれなくなったのだ。



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