Portrait-1
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―――壁にかかった“2枚の絵画”を見上げるような形で、
2人の人物がその絵の前に立っている。
右側の絵は、
金色の装飾に彩られた額縁に収まっており、そこには紫色のドレスに身を包んだ金髪の女性の姿が描かれている。
かたや左側の絵は壁にかかってはいるものの、上からすっぽりと白い敷幕を被せられているため、その下に何があるかは判然としない。
そして2枚の絵を前にしている2人の人物だが、
1人は壮年で身分の高いことを示す出で立ち、
もう1人は見た目若く、 かつ画家を思わせる服装に身を包んでいる。
絵を前にして2人の会話が聞こえてくる――――
「―――しかし、この王妃陛下の肖像画は本当に素晴らしい。
服装もさることながら、 その顔立ちや雰囲気が実に官能的でそそらずにはいられなくなる。
本人を前にすることなく、絵を見るだけで彼女本人の魅惑に囚われてしまうような・・・」
「お誉めに預りまして・・・・」
「いくらモデルにしたとはいえ、この雰囲気や肉感は直接目にしなければ描けまい。
まさか・・・・」
「・・・そこから先は、ご想像にお任せします」
「・・・まあいい。だが、お前が気を利かせてフィガロ王室に献上したものとは別に複製を作っていたお陰で、
私もこうして彼女の素晴らしさを目にすることができるのだから」
「・・・・・・」
「・・・で、そんな体験を踏まえて、自分の想像だけで描いた絵が左手か」
「はい。もっとも私の想像と肖像画を参考にしただけのものですが」
―――ファサァ・・・・
左側の絵にかけられていた白い敷幕が衣擦れの音と共にずり下ろされ、
下に隠れてあったもう “1枚の絵画”が2人の前に露になった。