Portrait-6
今日は短期間ながら夫エドガーが実際の公務でとりわけ忙しい時期にあたっており、
“相手にされない形”になったセリスがちょうど良い機会だと、
以前アウザーにも言われていたサウスフィガロの美術館のお忍び訪問を思い立ち、
今日こうして魔導バイクではるばるやってきたのである。
「・・・分かったわ。それじゃ案内してもらえるかしら」
「かしこまりました。それではどうぞ・・・・」
―――ガチャッ・・・・
―――ギイイイ・・・・
セリスに促され、
画家は目の前にある扉の取っ手を握りしめるや、
鈍い金属音を伴いつつもゆっくりと扉を開いていく。
開放された扉の向こうから生暖かい室内の空気に合わせて、
今までセリスが嗅いだことないような独特の香りが鼻をくすぐる。
「では、どうぞ」
先導する形で画家の方が先に部屋の中に入る。
一呼吸置く形でセリスもその後に続いた。
―――ギイイイ・・・・
―――ガシャァァ・・・ン