Portrait-20
島島島島島島島島島島島
―――画家が向かったのは隣接する小部屋、
物置にして“覗き”のできる部屋である。
明かりのない部屋の中を足元に気をつけながら奥へと進んでいくと、
闇の中に小さな明かりの宿る箇所があった。
それは壁に開けられた小さな2つの穴。
そこに目をやれば、
セリスやアウザー達がいる部屋の様子を真っ正面の位置から見ることができるのだ。
そう、
壁にかけられていた動物の仮面のうち“猿の面”の目の部分がこの覗き穴にあたるのだ。
(恐らくアウザー様もここで私やセリス様の情景を覗いておられたのだろうな・・・・・)
恐らく室内にいるアウザー自身、
今の自分の情景が覗かれているというのは先刻承知の上だろう。
その視線すら一種の刺激に変えて、
アウザーはセリスの絵を完成させようとしている。
(あの紫色のドレスを着たセリス様の絵を譲る代わりに、
直接セリス様と“繋がらない範囲”で戯れることができ、
またこうして覗くこともできるのだ・・・・)
(・・・あの絵を譲るのは正直惜しい気もしたが、
新たな作品を完成させられるのだからな。
当然の代償としておくか・・・・・)
自問し終えた画家は、壁に開けられた穴に両目を押し付け、
一転明るくなった視界に飛び込んでくる2人の様子に釘付けになった。
目の前の情景をそのままキャンパスに投影できるよう、
逃さず記憶するために―――――