記-12
バッテリーの残量を気にしつつ、そこら中に電話をかけた。
久しぶりに聞く方言に、ついつい、口調もなめらかになる。
女の赤ちゃんが生まれたのだと、私はみんなに自慢した。
祝福の声が返ってきた。
気の利いた冗談が返ってきた。
苦難を仄めかす言葉が返ってきた。
それぞれ違うことを言っていても、声の温度はおなじだった。
自分の声の温度が、それだけ熱くなっていたということだろう。
車窓の向こうに、青い空と、白い雲と、緑の山並みが過ぎていく。