記-10
視線をやると、私のすぐそばに、一人の女の子が立っていた。
丸顔で、素朴な印象のする、女子大生くらいの年格好である。
目と目が合うのも、必然だった。
私がスペースを譲ると、彼女はかるく会釈して、窓側の席に落ち着いた。
気まずい空気を感じたのは、おそらく、私だけではないだろう。
たまたま隣り合わせた、中年男と、女の子。
ただそれだけである。
中継の駅まで、二時間弱か──。
嬉しく思う反面、私は、微妙な憂いをおぼえた。