デネブの館-4
最近の体調はすこぶる良い。朝食を摂るようになったからだろうか。
朝食は良くて菓子パンに牛乳程度で、野菜など口にすることはしばらく無かった。
夕食にしても、弁当を買うか外食か、あるいは惣菜を買ってご飯だけ炊くのが関の山だ。
それなりに重宝すべき女だったが、彼女が俺の何なのか説明するのは実は難しい。
アイが野菜をたくさん無駄にして勿体無い、などとブツブツ小言を呟いている。
故あって、アイは勿体無いこと、贅沢なことが基本的には嫌いである。
彼女にとっての唯一の贅沢は、商売道具の一つでもあるアロマオイルを調達することくらいだろう。
このオイルを炊いて、占いを始めるのが彼女のセオリーらしく、この部屋にも時折そのような香りが満ちる時がある。
不快ではないが、クセのあるものもあって、俺には彼女の贅沢が今ひとつ理解しかねた。
もっとも結構高価なものらしく、あまり俺の部屋では炊かないのだが。
朝食を終えると、アイの言うように目も覚めたが、先程途中で中断した行為が気になった。
アイは、テレビでやってる星座の占いに夢中だ。
「なぁ、アイ。ちょっと、こっちに来いよ」
「なによ、もう。今、いいとこなんだから……乙女座のラッキーカラーは、赤か……」
「占い師のクセに、他の占いが気になるのか?」
「この番組の占いは有名な人がやってるの。あ〜あ、わたしも、こういう仕事が来ないかな……ゲ、アキオ君、天秤座は最悪だって」
「当たるものかよ。それより、こっちに来いって」
「――もぉ〜……ほんとに」
スケベなんだから、とアイはさも呆れたように呟く。
自分が何故俺に呼ばれたのか、察しているのだ。
テーブルの向こうに座っていたアイが、四つん這いでのそのそと近づいてくる。
俺は、とうに硬直しているものをズボンから取り出してみせた。
アイは、それをつまらなそうに見つめた。