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デネブの館
【その他 官能小説】

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デネブの館-19

「良いカードですよ、今のあなたには。これはあなたの心の状態を示しています」
「心の状態?」
「自分に自信がない、あるいは自分が嫌いになっている。違いますか?」
「そうかも、しれません。でも、それでは良いカードとは言えない」
「フフ、悪魔のカードと言うのはね、構図が恋人のカードに似ているのです」

 そう言って、魔女は恋人のカードを悪魔のカードの隣に置いた。
 両方共、下段に人間の男女が並んで立っている。
 片方は人間の男女の間に悪魔がいる、他方は間に天使がいる。
 言われてみれば、似ているように思える。

「つまり、悪魔と恋人のカードは表裏一体と言えます。あなたの心がけ次第で、恋人にもなるのです」
「なるほど――しかし、自信がないな」
「あなたは、自分の気持ちを相手に伝えていますか?」
「――いえ」
「ならば、自ずとすべきことははっきりしているのでは。あとは自分の気持ちを信じることです」
「俺が気持ちを伝えても、相手がその気でなければどうしようもありませんよ」
「その心配には及びません」
「何故ですか?」

 魔女はフッと笑った。何か根拠があるような笑い、という風に見えた。
 何故この魔女が、心配ないなどと断言出来るのか。

「あの、もしかしてあなたはアイという女をご存知なのでは?」
「――さあ。さて、お客様。もうすぐ夜が明けますよ。そろそろ、お開きにしましょうか」
「ちょっと待ってください。あ、そうだ、見料を――――」

 財布を出そうとすると、猛烈な眠気が俺を襲った。
 それから先どうしたのか、分からない。
 目覚めた時にいたのは、何故か昨日飲んだ居酒屋の中だったのだ。


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