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デネブの館
【その他 官能小説】

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デネブの館-15

「お前の占いを見るのは、一週間ぶりか」
「そうね。わたし、今週は朝食作れなくて、ごめんなさい」
「いいよ。アイの方こそ、体の具合はいいんだろうな?」
「うん、平気よ。今、充実してるの」

 アイはにこりと微笑んで言った。彼女なりに何かが充実しているのだろうか。
 そして、俺の前にカードを並べた。俺は、カードをめくる。
 何かの王様のカードのようだ。もう一枚は月が描かれていた。

「あら、いいじゃない。これは皇帝のカードね。これはね、女性とお金を支配するって意味があるカードなのよ。――そしてその為には、少しチャレンジしないといけない」
「ふぅん……月は、あまりいい意味じゃないのか?」
「難しいカードね。いいことも悪いこともぼんやりとしている、そんな感じかな」
「しかし、金と女なんて、やっぱりアイの占いは当たらないな」
「そうかしら?」

 アイはそういう俺を否定するかの如く、ニヤリと笑う。
 俺はその笑いの意味がわからない。

「ねぇ、アキオ君は、好きな人っているの?」
「好きな人? 居たら、お前をここに置けないだろう」
「それも、そうね」

 俺の答えに納得したように、アイは頷いた。
 思えば、アイに会う以前は仕事ばかりの生活で、それが故に彼女の体に溺れたのである。
 もう一緒に住んで、三ヶ月近くになる。あっという間だったという気がする。
 もっとも、アイとまともに一緒に居るのは日曜日くらいだけだから、実質的にはもっと短いとは思う。
 それでも、最初はお互い敬語でぎこちなかった生活も、いつの間にか打ち解けて、アイが居て当然という生活に変わっていた。
 
 彼女の存在が、俺の中で大きくなりつつある。
 そういう気持ちを押し殺していた。
 この生活が、俺は嫌いではなかった。
 この生活が、また変わってしまうのが嫌だった。だから、気持ちは押し殺した。
 アイが、微笑みながら、俺に朗報があると言った。
 そう言って、封筒を俺に寄越したのである。中身を見ると、金だった。
 一万円札が、少なくない枚数入っている。何故か数える気がしなかった。


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