第三部-5
「寛美ちゃん、浣腸してあげるからね」
寛美には、理解不能だった。
頭の中で、その言葉を漢字に変換できなかった。
まさか・・・
体の血が逆流するようだった。
「何言ってるの?」
「寛美ちゃんは、ガンバリ屋さんだから、
初心者扱いはしないからね」
ネコ撫で声が、嫌悪と恐怖を一層高める。
男が、部屋の隅の薄汚れたバックに手を入れる。
器具がぶつかり合う音が、寛美にも聞こえる。
一体、何を用意しているのか・・・
一服を終えた男が、灰皿で吸殻を揉み消した。
第2幕開始の合図だ。
「倍の量 ぶち込んでやれよ」
「相変わらず、お前は厳しいねえ」
気味の悪い笑いが響いた。
狂気の第2幕が 始まろうとしていた。