第九話(最終話)-7
「優紀。俺の名前を言ってみろ」
「? 魁さん?」
不思議顔で首を傾げる優紀。
「呼び捨てで、だ」
「呼び捨て……」
「あるいは、もっと砕けたしゃべり方をしてほしい。俺に対してだけでいいから」
「ヘイユー!」
「だからっていきなり外国人みたいになるな」
「で、でも、『魁』と呼び捨てにするのは抵抗がありますっ」
そんなものか。
俺なんかは年上だろうと、仲が良ければ呼び捨てにするんだけど。
「じゃあこうしよう。俺のことを呼び捨てにしなければ、毎晩寝ている優紀に悪戯する」
「もしもし警察ですか」
「ごめんなさい嘘です」
彼氏に手厳しい彼女だった。
「その、いずれ、に、肉体的な関係になったとして、寝込みを襲ったりしたら、許しませんからねっ」
「紳士の俺をナメるな」
なんたって俺は優紀が同居してからの数日、一度も優紀にいかがわしいことはしていないんだからな。
「紳士の部屋にエロ本があるんですか?」
「お、男だからな」
見つからないように隠しておいたというのに、一体どこをどうして見つかったのだ!?
「『貧乳女子高生』」
「ぐはっ」
「『制服クラブ』」
「ぐはっ」
「HENTAIですね」
「男だから仕方ないだろー!」
開き直った。
……しょうがないじゃん。
「前に言ったろ。優紀に対して下心はあるって」
「そ、そうですか」
「優紀をおかずにしたこともある」
「それは聞きたくなかった!」
こんなぐだぐたな会話をしている間に、エンディング。
「ほ、ほんとにこのまま終わるつもりなんですか?」
「ああ。最後に一言、勇者の方々にどうぞ」
「え?えっと、ありがとうございました……?」
「では俺からも」
人はいつか死ぬ。
不死ではないのだから、病気なり寿命なりで、必ずいつか命が尽きる。
だから!
「俺と優紀の物語は、デッドエンドだ」
(最終話 完)