第九話(最終話)-5
「優紀。この際だから言っておくけど、男の娘(おとこのこ)に需要はない」
「ありますよ!男性器がついてればそれでいいんです!」
言ってから再び顔を真っ赤にさせる優紀。
馬鹿だこいつ。
「後ろに穴もありますし」
「それ以上言うな吐き気がする」
誰が杏子とそんな腐女子が喜びそうな関係になるものか!
「でも、そうでもしないと『終わる終わる詐欺』になっちゃいましよ」
そんな某ジャンプアニメみたいなことはしない。
「俺たちは恋人で、将来結婚する。それで作品は終わりだ。俺たちの人生は、まだ始まったばかりだけどな」
「でも、恋愛小説が必ずしもハッピーエンドとは限りませんよ?」
「そこは頼むからハッピーで頼む」
「そんな感じで、作品は終わりを迎えたのです」
(最終話 終)
「いや、何度も言うが勝手に終わらせるな」
これじゃあ終わる終わる詐欺と大差ないじゃないか。
「最終話というからには、優紀の過去を聞かせてもらうぞ」
「過去?」
「ああ。自殺しようとした理由だ」
曖昧にはわかっていても、明確にはわかっていない。
「それより、にゃんさんとの出会いの話のほうが盛り上がると思います」
「いいからヒロインなんだから過去編だ!」
「横暴です!ヒロインの扱いがぞんざいです!」
***
って回想モードに入ってます!?
えー、お笑い的要素は全くないので、苦手な方は飛ばしちゃってください。
魁さんと出会う少し前。
高校一年生の夏休みが終わってすぐのことです。
高校に入ってからいじめられていた私は、憂鬱な気持ちで登校しました。
いじめられているから休む、という考え方は、私にはありませんでした。
それは逃げている気がして、それから『高校』というものに、憧れや期待といった曖昧な想いがあったからかもしれません。いつか誰かが助けてくれるはず、と。
でも、結局魁さんと出会うまでは誰も助けてくれませんでした。
「…………」
教室に入ると、いつもの私の席がなくなっていました。机ごと。
辺りを見回しても、皆は視線を逸らしたり、笑いを堪えていたり、私を見ながら他の子と話をしていたりと様々で、私の席がないことに我関せずな感じでした。