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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-5

 知らないアドレスだった。取りあえず開く。
「っっ…?!」
『sub:手紙の返事
面白いな。俺ではなく言葉に恋したなんて。聡明な女は口説き文句も史的なんだな。
さて、だ。ここで問題だ。
俺はこうやって君のアドレスを知っている。加えて、君が今日別人の様に変身したのも知ってる。つまり、君を知ってるって事だ。俺は篭崎龍奏だが、篭崎龍奏ではない俺を、君は知っている筈だ。聡明な君なら解ると思うが。
全てが解ったら…そうだな、デートでもしようか。楽しみにしてる。』
 なんたることか。知ってる人が、憧れの篭崎龍奏だったなんて。でも…アドレスなんて友達付き合いのある人しか教えない筈…。
 クラスの男子?まさか…そんな奴がいたらすぐに気付いてる。仲の良かった先輩?いや、しばらく連絡してないから、アドレス変わったのも送ってない。じゃあ、元カレ?なんて存在はいないって(寂しい一人ツッコミ)じゃあ誰?
 うーっ、解らない。何度もメールを読んで見るけど…ニヤけてしまう。だって、だって…!絶対に返事なんて期待しない、ファンレターみたいなラブレターだったのに。返事がきちんと来て、私のこと知ってるって…凄く嬉しかった。
 その夜は、ドキドキしてなかなか寝付けなかった。学校に行くのが待ち遠しかった。
………………
 やっぱり学校に行く髪型はポニーテールにした。コンタクトも外して眼鏡。服装もジーパン。昨日の事は自分でも夢じゃなかったか、と思うくらい元の私に戻った。
「おはよ、紫乃。あれ、髪切った?」
「おはよ。うん、少し軽くした」
「さては昨日はやっぱり…オトコ?」
 グイッと親指を立ててニンマリする。千鶴は…まったく。
「はぁ。御想像にお任せします」
「あん。やっぱり冷たいなぁ」
 喋りながら教室に入る。そう言えば…
「千鶴…なんで今日、車で来なかったの?」
 そう、千鶴は車通学。私の様に電車に乗り、駅から歩かないので、昇降口に入るまでの方角が違うのだ。私は西門からで、千鶴は駐車場のある東門からなのに。
「なんで西門から入って来てるのさ」
「いや…その…」
 朝から頬を紅く染めて言葉を濁す。
「はは〜ん。さては彼と来たの?」
「う、うん」
「内緒じゃなかったの?」
「もちろん内緒だよ。だから、そこのコンビニの裏で降ろして貰ったの」
 コンビニって、学校から五分くらい歩く距離にある。
「彼が気の毒だわ…。」
「そうだよね、やっぱり駅で降ろして…」
 駅は学校からさらに遠い。はぁ…まったく、何にも解っちゃいない。このままじゃ彼が報われない。仕方ないな…
「そんな事ないわ。彼、きっと送り迎え出来るの喜んでるわよ。」
「えへへっ。だよね!昨日パールホワイトのヘルメット買って貰ったの。私専用だって。ほんと、嬉しくて。」
「はいはい。」
 ご機嫌な千鶴はさておき、篭崎龍奏について考える。一晩考えた結果、バイトや塾など外の関係が無い私だ。学校にいる人に間違いは無いだろう。
 向こうはアドレスを知ってる、私は見た事がないアドレス。直接交換した訳ではないな。
 だとしたら、誰かが伝えた…か。それともアドレスが解ってしまった…そういう………。
 …さっぱりわからない。なんで?ストーカー?って私のほうがストーカーになりたいくらいだけど。はぁ…私全然、聡明なんかじゃないよ。
「山形先生っ、」
 千鶴が廊下を通り掛かった山形先生を呼び止めた。
 山形先生と言えば、千鶴が夏まで続けていた吹奏楽部の顧問。走って廊下に行く後ろ姿を目で追う。
 確か山形先生は、産休の赤津先生の代わりで来ているんだっけ。一年だけの非常勤務。つまりバイトみたいなもの。担当科目は化学、吹奏楽部の指揮者兼顧問…。格好いいし優しいらしいし、二重丸な先生…って噂。ふと目が合う。


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