第七話-4
優紀は顔を赤らめて俺を見つめていた。
見つめていた、が。
「ってそれ、ハガレンでエドがプロポーズした時に言ったセリフじゃないですか!」
「なんだってそれは知らなかった(棒読み)」
ハガレンはともかく。
「優紀。答えを聞かせてくれ」
「まさか初プロポーズがハガレンのパクリだなんてまさか初プロポーズがハガレンのパクリだなんてまさか(以下ループ)」
せっかくのシリアスシーンなのに、優紀ってば壊れちゃったよ。
「優紀。俺は真剣なんだ。真剣と書いてマジなんだ」
「そ、そう言われても……」
「俺が結婚してやんよ!」
「またパクリ!?」
「俺、この戦いが終わったら、お前にプロポーズするんだ」
「今度は死亡フラグ!?」
「それで、優紀。どうなんだ?結婚してくれるのか?」
「…………」
何かを考えるように黙る優紀。
「魁さん」
しばらくして、優紀は真剣な表情で俺を見つめてきた。
「私は、ヤンデレなんです」
「知ってる」
デレかたがヤンチャなんだろ。
「私と結婚するということは、私と死ぬということです」
「心中を前提にってやつか。ちなみに予定はいつ?」
「決めてません。三十代、四十代……そのくらいですかね」
早死には確定しました。
「そっか。じゃあ結婚を前提にした付き合いはオッケーってことで」
「心中を前提に、ですよ」
「そうだった」
「…………」
「…………」
「な、なんで急に黙るんですかっ」
「いや、ほら、だって、流れ的にここはさ……」
キスするシーンだと思うのだが。
「優紀は、キスしたことあるの?」
「残念ながらないです。魁さんは……ありそうですよね」
「どういう意味だ」
「にゃんさんにされてそうです」
「気持ちの悪いことを言うな」
「大丈夫!たとえ魁さんがにゃんさんと肉体的な関係でも、私は快く受け入れます!」
「…………」
頼むから俺を腐女子の妄想に巻き込まないでくれ。
「では」
優紀の両肩に手を置き、真っ直ぐに瞳を見つめる。
「え、あの、ほ、ほんとうに……?」
「ほんとうに」
俺は、俺たちは、初めてを経験した。
キスしただけなんだけどな!
(第七話 終)