第七話-2
「そう。優紀もそれを望んでいるとは思うけど……」
望んでる?
優紀が、俺と恋人になりたいって?
「あの、それはないと思います。前に、それはありえません、と言っていたので」
「うーん……じゃあ、ただの友達が、同じ部屋で寝泊まりできる?」
「それは……」
同性ならともかく、異性でそれはないよな……高校生だし。血気盛んな時期だし。
「『ありえない』っていう否定は、多分身を守るための防衛策。でも一緒に住んでる。しかも同じ部屋で」
同じ布団で、とまでは知らないんだろうな。
いやしかし、よく堪えてると思うよ俺は。
「それは、信頼してるからなのか、もしくは襲ってというサインね」
「うむ」
「…………」
なんか今、優紀母の口からとんでもない言葉が飛び出したような。
しかも優紀父も頷いていたような。
「あの子、魁くんと二人きりの時もああなの?」
「ああ、とは?」
「敬語」
「はい。僕に限らず、優紀さんは誰に対しても敬語です」
子ども(ハーモニーちゃん)相手でも敬語なんだよな。
「どこか線引きしてるのね」
優紀母はしばし思案顔になり、やがて。
「魁くん。優紀の処女、もらってあげて」
「うむ」
「…………」
何この両親、ついていけない……。
しかも優紀父、さっきから「うむ」しか言ってないし。
「お願いね」
そんなことお願いされても困る。
***
処女はともかく。
優紀母が言いたかったのは、もっと押していけということだったのだろうか。
「んー……」
いつものように、隣ですやすやと寝息をたてている優紀。
と、その隣にハーモニーちゃん。
「可愛いなぁ」
ハーモニーちゃん。
じゃなくて、優紀。
「俺ってすごくね?」
自画自賛。
しかし考えてもみろ。隣にこんな可愛い女の子(優紀!)が眠っているのに、今の今まで何もしなかったんだぜ?
今の今までは、だけど。
だけど、それはもう卒業だ。
別にいかがわしいことをするつもりではない。
寝込みを襲うつもりはない。
そもそも隣にハーモニーちゃんがいるし。
いや、いなかったらするのかとか聞かないで。
「…………」
優紀の体を抱きしめ、俺は深い闇に落ちていった……。