第四話-7
思考を切り替えよう。
ハーモニーちゃん。
俺が半日以上も眠っている間に、果たしてハーモニーちゃんの今後はどうなったのだろうか。
わんわん!
みゃあみゃあ!
犬や猫ならば、このように家で飼うことも可能だが、ハーモニーちゃんは当然ながら人間である。
不本意ながら犬や猫は法律上『物』扱いだが、ハーモニーちゃんには人権がある。
「うーん……」
などと難しいことを考えている間に、トーストが焼き上がった。
そして同時にピンポーン!と来客を告げる音が鳴り響く。
誰だか知らないがなんてタイミングの悪さなんだ!
あと五分くらい待ってろ!
「はい」
しかし無視するわけにもいかず、応答する。
『その声、ダーリン?私だよ。傍芽』
お前か!
傍芽だけにほんっとはた迷惑だな!
「ああ……どうした?」
『とりあえず開けてくれる?鍵かかってるみたいで入れないんだけど』
「…………」
勝手に人ん家のドア開けようとすんなよ。
これからはこれまで以上に戸締まりをしっかりしよう。
「まぁいいけど。今開ける」
あまり気乗りはしないが、幸い優紀も出かけているし構わないだろう。
別に浮気とかじゃないよ?
い、いやほら、優紀にも『恋人や友達じゃありません』って言われたわけだし?いわば優紀は他人だよ他人。幸せにするとは言ったけれど、だからといって俺が他の誰かと恋愛してはいけないということにはならないだろう?
……まぁ、今さら傍芽と恋仲になるつもりはないし、他人と言うなら恋人だって他人なんだけど。
「はろはろーダーリン♪おやおや、靴が全然ありませんなー。偶然にもダーリンしかいないみたい。すっごく偶然だなー。いやー偶然ってすごい」
なんでそんなに偶然連呼するんだよ。
優紀たちが出かけて二時間前後は経っているはず、俺が起きた直後に家を訪ねてくるのは、強調するまでもなく偶然だろうに。
「俺これから朝飯食べるから、テレビでも見て待っててくれ」
「朝ごはん?魁は十二時を回ってから食べるご飯を朝ごはんって言うの?」
「…………」
昼ごはんだな。
「朝食べてないんだね。まぁ知ってたけどさ」
「なんで知ってるんだよ!?」
「おっとこれは失言。気にしないでいいからね」