無形の愛<加奈の事情>-3
「んんっ 龍二……さん」
横向いたり、うつ伏せになったり、
何度も体勢を変えながら龍二さんに抱かれる自分を描く。
こんなはしたない私を知られたら嫌われちゃうだろうか?
いつだって龍二さんに抱かれるのは気持ちいいのだけれど、
ほんとはもっと何時間でも抱き合っていたいだなんて言ったら、
龍二さんはどんな顔をするのだろうか?
「はぁ……っ 気持ちいいっ……」
うつ伏せのまま腰を高くあげると、後ろから突かれているのを思い出しながら、
二本の指を繰り返し何度も出し入れさせる。
こんな恰好、人前でするなんて思ってもなかった。
なのに今ではひとりでするときのお約束のひとつだなんて、
あまりの貪欲さに自分でも少し引いてしまう。
だって、龍二さん後ろからするの好きみたいだから、
私のおしり、綺麗で色っぽいって言ってくれたから、
取って付けた理由で私は、ひとり淫らに腰を振る。
結局、私も後ろから責められるのが好きなんだろうな。
でなきゃこの気持ち良さに説明がつかない……
「あぁっ だめぇっ イクっ イっちゃうよ龍二さんっ」
自分では制御出来ないくらいに身体が激しく揺れ動く。
開ききった陰唇からは掻き出されるように蜜が溢れ出て、
きっと、龍二さんがいつも言う通り、
おしりの穴はキュッと締まっているのだろう。
「んんっ イクぅっ……」
ビクンと腰が高く跳ね上がったかと思うや、身体中を快楽が駆け巡るのがわかる。
力が抜け落ち、投げ出されるように身体がベッドへと倒れ込むも、
焦らしに焦らした反動なのか、腰だけは繰り返し何度も痙攣していた。
「はぁっ 龍二さ……ん はぁっ」
荒い息をそのままに、目を閉じ枕に顔を埋める私。
愛しい彼の名を何度も呼ぶけど、呼べば呼ぶほど寂しさが募ってしまう。
時計を見るももう八時を指している。
もう?……いや、まだ八時だ。
いまならまだ電話してもきっと許される時間じゃないだろうか?
ぼんやりとした頭でそんなことを考えながら、
重い身体を引きずり、テーブルの上の携帯を握り締めた。
声が聞きたい。でも、かける理由が見あたらない。
こんな時、恋人同士なら『声が聞きたかったの』なんて可愛い理由が許されるのだろうか?
他人じゃ、それも黒の他人じゃそれは許されないんじゃないだろうか。
私がそんなことを思いながら、携帯の蓋を開けては締めを繰り返し、
龍二さんに電話するのを躊躇っていると……
突然、その携帯からけたたましい呼び出し音が鳴り響いた。